2020年の東京オリンピックに向けて、大型テレビなどの需要は期待できるだろうか。もちろん、需要はあるだろう。なぜならば、2010年ごろに実施されたエコポイントをきっかけに多くの消費者がテレビを購入しており、ちょうど買い替え時を迎えるからだ。しかし、それが、家電量販店業界を復活させるような大特需となるかというと、楽観できない。ドン・キホーテのような異分野から激安プライベートブランドのテレビ販売に参入する勢力もあるからだ。さらに、スマホのさらなる普及はテレビの需要減につながりかねない。
以前、家電量販店を取材して分かったことは、酒類や日用雑貨はあくまで客寄せにすぎなかったことだ。家電だけでは来店頻度が低くなるために仕掛けられた“まき餌”だったのである。だから、酒類は家電量販店の奥に配置し、そこに至る通路にオーディオ機器が置かれていた。
ヤマダ電機は近年、住宅事業に手を出している。家電が売れないから、その家電を入れる箱を販売しようというわけだ。あるいはリフォーム時に、家電を買ってもらうことを狙っている。いわゆる“家電量販店”と思われているビックカメラも、いまでは“家電量販店ではない”と言い切り、総合小売店へ脱皮しようとしている。
さて、このように“家電一本足打法”の崩壊は、もう一つの危機を招いている。それは、各社が家電販売を減らすことにより、リベートも減少してしまうことだ。家電が売れなくなるということは、その減少幅以上の影響があるのだ。
リベートとは何か。文字通り、メーカーから家電量販店の販売量・仕入量に応じてて“上納”される協賛金だ。一般的な感覚からすると、売る側のメーカーが、買う側の家電量販店にお金を渡すのは、少し奇妙に感じられるかもしれない。
そして、「どうせお金を払い戻してもらうのならば、最初から仕入れ代金を値引いてもらえばいいじゃないか」と思われるかもしれない。しかし、これができないのは、メーカーが販売価格の下落を恐れているからだ。
家電量販店Aに10万円で販売しているテレビを、別の家電量販店Bに13万円で販売することはできる。しかし、一方が13万円であれば、それは必ず10万円まで下げさせようとする圧力につながる。ゆえに、まずは両店ともに13万円で販売しておいて、販売協賛金の名目で3万円分をキャッシュバックしたほうが良いことになる。
これは家電量販店の業界だけの現象ではない。他の業界であっても価格値引きではなく、販売協賛金の名目で処理されるのにはこういった背景がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング