こうしたVチューバ―は企業が事業として運営している場合もあれば、個人が1人で演じていることもある。石塚さんによると、Vチューバ―の広告モデルはユーチューバーと同様、動画の中で企業の商品を紹介する「タイアップ動画」が多いという。特にVチューバ―はアニメやゲームの好きな若い層に支持されていることからゲームと親和性が高く、ゲームの実況をしてタイアップする場合が少なくない。
まさにユーチューバーのバーチャル版といえるが、Hikakinなど現実にいるタレントと違い彼らはあくまで架空の存在。石塚さんによるとVチューバ―の撮影には人間の動きを3Dに変換する技術が使われる。もともとゲームやアニメの制作で使われていたもので、声優が特殊なスーツを着て動いたり話したりすると、それが画面上で動くキャラに変換される仕組みだ。
こうして可愛らしいキャラが、現実の人間のようにトークをしたり商品の宣伝を繰り広げたりするVチューバー。最近ではサントリーが「119歳で水の国出身」という謎の設定の公式Vチューバ―「燦鳥ノム」を発表するなど、大企業の参入も相次ぐ。しかし、石塚さんは「現実のユーチューバー並みの人気を得るにはいま一歩足りない」と指摘する。
石塚さんによると、多くのVチューバ―に欠けているのは「世界観」だという。Vチューバ―のファンの多くは、若年層の中でもアニメやゲームが好きな「オタク」。石塚さんによると、こうした層はキャラに家族構成や過去何をしていたかといった「設定」を強く求めるという。
一方、多くのVチューバ―はそうした設定をあまり作り込まないままスタートしている場合が多い。石塚さんは「できたばかりのコンテンツなので、世界観をあまり決めずに運営側が初めてしまったケースが多い気がする。彼女らはキャラ設定がきちんと定まっていないため、トークの中でも自分の過去の話を掘り下げられない」と指摘。コンテンツビジネスの専門家より、ITの技術寄りの人たちが担い手となっていることが多い背景も影響しているとみる。
結果「普通のユーチューバーと似たようなタレントビジネスになってしまっている」(石塚さん)。実はユーチューバーに比べ、Vチューバ―には活動内容に制約がある。あくまでバーチャルなので現実の商品を手に取ったりすれば違和感が生じる。結果、動画内容はトークとゲーム実況に偏りがちという。
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