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ガス会社勤務だった女性が「世界最大級のデジタルコンテンツ会社」を率いるまで新連載:パーフェクトウーマン 女性が拓く新時代(4/5 ページ)

» 2018年08月07日 08時30分 公開
[大宮冬洋ITmedia]

既成概念をくつがえすビジュアルを提供する

――最後に、今後の課題と目標を教えてください。

 当社は写真や動画の検索数やダウンロード数に関する世界規模のビッグデータを持っています。その傾向を分析して、宣伝広告のトレンドを「CREATIVE IN FOCUS」として毎年発表しています。

 最新トレンドの1つが、「Masculinity Undone:脱・男らしさ」です。従来の「マッチョな男性」ではなく、「悩んでいる男性」の姿がCM などで使われるようになりました。お父さん像も変わってきていて、庭でスポーツをするだけではなく、娘に読み聞かせをする様子などがよく使われています。

phot 「脱・男らしさ」をテーマにした写真(565942359、By Wunderfool/Getty Images)

 女性像も変化しています。当社では、既成概念にとらわれない女性の写真が多く使われていることに着目し、トレンド「GRITTY WOMAN」として2017 年に発表しました。いま、美人であることではなく、何をしている女性なのかが大事になってきているのです。

 ビジュアルが世の中に与える影響は大きなものです。それを提供する会社としての責任を強く感じています。当社では、「Re-Picture」という概念を打ち出しており、既成概念をくつがえすようなビジュアルの提供にも関わっています。

phot GRITTY WOMANからの1枚(96322887、Peter Beavis/Getty Images)

 ドイツでの斬新な試みとしては、ホームレスの方々にモデルになっていただき、プロのスタイリストをつけて、大学の先生や建築家などのさまざまな職業の装いをしてもらいました。とてもすてきな写真を撮ることで、モデルになってくださったホームレスの方も勇気付けることにつながったのです。制作側の意図としては、ホームレスの方も私たちと何ら変わりない人間であると訴えることでした。

 既成概念を打破していくことは今後も当社の重要課題です。日本においては、LGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、ジェンダークィア)の方々のビジュアルを、支援団とのパートナーシップにおいて制作することを考えています。

――既成概念を打破するためには、島本さんが欧州での生活で体得したダイバーシティーとインクルージョンが重要になりそうですね。

 はい。ただし、達成までに何年もかかる大きな課題だと思っています。なぜなら、バイアス(偏見)を持つことは、自分を守ろうとする本能の働きでもあり、人間の根本的な部分だからです。一方で、多様性はイノベーションにも有効だという論文も読みました。会議などの際にいちいち前提から確かめる必要が生じるため、まったく新しい発想や解決方法が生まれやすいのです。

 ただ、バイアスを消し去ることは無理なので、それをいかにかみ砕いて現状を改善するのかを考えなければなりません。いま、課題の難しさをようやく認識した段階です。

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