本当は食べられるのに、市場では評価されていないため、定置網などにかかって漁船に引き上げられても廃棄されてしまう魚は少なくない。例えば、ケスジヤドカリ。
「漁師さんたちも船の上で小腹がすいたときに生で食べているそうです。漁師さんたちは魚に関してはとても舌が肥えているので、おすすめされたものに外れはありません」
説得力のある話だ。そして、ちょっと食べてみたくなる。
「この魚は食べられますよ、と答えたときのお客さんの反応はすごいです。『じゃあ、このタカアシガニは?』などと聞かれますが、タカアシガニは蒲郡では普通に食べられているカニですよね」
グルメハンター活動は食育にも通じているのだ。その後、三田さんはこの活動の内容をブログや企画展でも発信し続けている。ちなみに、漁師が持って来てくれた「天然もの」はおいしくても、しばらく水族館で飼っていると味が落ちてしまう、と三田さんは指摘する。アジの切り身などのエサの味が強く出るからだ。
「トロが大好きな人ならばいいかもしれませんが、アジの脂の臭いがきつすぎます」
脂っこいのは水槽内での運動不足も影響しているのかもしれない。食事を含めた環境で体質がまったく変わってしまうことを三田さんは舌で知っているのだ。
「エサ自体を食べてみたこともあります。クラゲや稚魚などに与えるアルテミアという動物性プランクトンです。フィルターで濾して、スプーンですくって食べました。ほとんど味がしません。クラゲが夢中で捕食しているので僕も食べてみたのですが……。クラゲは触手を使って自動的に捕まえて胃に入れているだけで、特に味は気にしていないんだなと思いました」
クラゲにはおそらく味覚がなく、本能のままに食べているだけ。当たり前な気もするが、エサを食べてクラゲの追体験をした人間は数少ないだろう。
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