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オオグソクムシにウミグモ! 不気味な深海生物を食べ続ける水族館員のシンプルで真摯な理由新連載:ショボいけど、勝てます。 竹島水族館のアットホーム経営論(5/6 ページ)

» 2018年08月09日 07時30分 公開
[大宮冬洋ITmedia]

飼育員一人一人の個性を打ち出し、客が話しかけやすい状況を作る

 三田さんの体を張った活動は、「この魚は食べられるのか。どんな味がするのか」という知見として飼育員全員に共有される。接客をする際の大きなネタになるのだ。

 「お客さんの中には、実際に食べているのは僕だと知っていて会いに来てくれる人もいます。特にちびっこたちが多いですね。僕が出演して深海魚を食べたテレビ番組を録画して毎日のように見ているという子が来たり……。うれしいです。事務所やバックヤードにいても、呼んでもらえたらすぐに館内に出ますよ」

phot 軟骨魚類のサメ、ホソフジクジラ。この魚も瀕死状態で搬入されることが多く、長期の展示は難しい
phot 死んでしまったホソフジクジラを実食。「身は薄味のタチウオみたいです。焼いた皮はジャリジャリしていて食べられません」

 副館長で広報担当でもある戸舘さんは、「すでに有名な小林館長だけでなく、飼育員一人一人をお客さんに知ってもらう」ことを今後の方針としている。竹島水族館により愛着を持ってもらい、飼育員に声をかけやすい状況を作るためだ。三田さんのグルメハンター活動はその好事例といえるだろう。

 なお、竹島水族館の飼育員たちは指定管理業者として蒲郡市から水族館の運営を委託されている立場にある。5年ごとの契約が更新される保証はどこにもない。現在のメンバーあってこその竹島水族館だと知らしめることで、自分たちが委託され続けやすくなるという狙いもあるのだろう。竹島水族館だけはなく、多くの「下請け」業者に通用する生存戦略だと筆者は思う。

phot 三田さんはアシカの飼育とショーも担当。グルメハンター活動は仕事のごく一部です

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