3時間の研修では想像以上に複雑なコンビニ業務を覚えることになる。例えば、箸やフォークといった客に渡す備品と商品との組み合わせ。アイス1つとっても、高価格帯のハーゲンダッツと比較的安価な明治 エッセル スーパーカップでは付けるスプーンの種類が違う。「めんどくさいですね。でもこれが日本のおもてなし」(吉岡さん)。
しかも、ローソンでは機械的に「パスタならフォーク」と付けているのではなく、箸で食べる人も想定して何を付けたらいいか客に聞いたりもするという。既に覚えきれなくなってきた記者は少し頭がくらくら……。
でも吉岡さんは「(外国人の2人は)コンビニで働くうちにすごく日本語が上手になると思うよ。それでお金ももらえる。世の中にはもっと楽な仕事もあります。でも、日本語覚えるために日本に来たんでしょ、頑張りましょう!」。2人も真剣なまなざしでうなずく。実際の店舗の棚でローソンで「前陳」と呼ばれる商品の並べ方を実践するなど、コンビニの仕事のイロハがたたき込まれていく。
日本人スタッフ向けよりかなり手厚くスパルタに見えるこの研修。合間に吉岡さんに、なぜそんなに厳しくするのか聞いてみた。「私のもとを旅立って現場で頑張るのはあくまで彼ら自身。客や店舗によってはあまり外国人を受け入れてくれないところもある。日本人と同じことをしていては(彼ら)外国人は勝てないのです」。
一方、彼らの母国の文化には最大限配慮して指導している。「『(外国人スタッフの)文化なんてどうでもいい。ここは日本だ』って言ってしまうと彼らの心は傷つく。当たり前のように育ってきた風習を変えるのは苦痛でしょう。だからこのように丁寧に教えるのです」(吉岡さん)。
研修の途中、私服の若い女性が笑顔で事務所に入り差し入れを置いていった。聞くとこの外国人研修の“OG”だという。「『本当にここで働いてよかった』と言ってくれる子も少なくない。私も彼らを教えていて癒されるのです」(吉岡さん)。
研修のクライマックスは、事務所に置かれた練習用のレジを使った接客術の会得だ。レジに来た客へのあいさつ、商品やお金の受け渡しに至るまで必ず1分以内に一連の手順を完了しなくてはいけない。先生の模範演技の後、2人が客側と店員側に分かれて交互に練習を繰り返した。
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