富士重工とSUBARUのフォレスター池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)

» 2018年09月18日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

クルマのリズムがしみじみと良い2.5

 一方で、2.5リッターユニットはとても鷹揚な構えで、動き出しから高速レンジまで、どの回転数でもスムーズで穏やかながらしっかり力強い。そういうユニットに合わせたクルマの挙動のリズムがしみじみと良い。

 フォレスターは室内に座った瞬間、どっしりたっぷりとした大ぶりで柔らかいシートと、握り心地の柔らかいステアリングに出迎えられる。クルマを作った人は、硬質なスポーツ感ではなく、優しくて穏やかでフレンドリーな世界を作りたかったに違いない。少なくとも内装の世界観はそういうものになっている。

内装のテーマは「ふくよか」。ステアリングもシートも全体にたっぷりとして柔らかい感触 内装のテーマは「ふくよか」。ステアリングもシートも全体にたっぷりとして柔らかい感触

 その世界観の延長にあるのがどちらのユニットかと言えば、それはまごうことなく2.5リッターである。筆者の感想としては、今年乗ったクルマの中で屈指のできだと思う。自分の生活にこのクルマがあったら少し幸せになるだろうと思えるクルマ。そんなクルマは滅多にない。自動車に対する手慣れた見識と作り込みがそういう完成度にフォレスター2.5を仕立てさせたとも言える。それは富士重工が長きに渡ってクルマを造ってきた集大成であり、手の内に収めた技術で仕上げた卒業制作のようなものだろう。

 フォレスター2.5は、2018年の今、とても良いクルマだと思う。恐らく何十年か経って思い出したとき、「あれは良かったなぁ」と思えるだろう。しかしながら、とここでまた主張が裏返る。それは過去の集大成であって未来を志向していないのではないかと思う。

富士重工とSUBARU

 環境規制が年々厳しくなる中で、より実走行に近いWLTP(Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedure)での燃費や、CAFE規制(企業平均燃費)といった規制をクリアしていくためには、いやもっと直截な言い方をすれば、自動車メーカーとして生き残るためには、2.5リッターと言う大排気量水平対向はいずれ切り捨てざるを得なくなる確率が高い。

 現状では「2.5とe-BOXERの燃費の差は乗り方次第」とSUBARUは言うが、両者の間には残された伸び代の差があるはずだ。だからこそ富士重工はSUBARUに社名変更をし、e-BOXERで未来のためのチャレンジを行なっている。筆者は、2.5は富士重工のクルマであり、e-BOXERはSUBARUのクルマに思えるのだ。

 チャレンジは試行錯誤であり、蹉跌(さてつ)を伴うのはやむを得ない。e-BOXERはそのための一歩なのだと思う。変わらなければ未来はないし、未来がなければ技術があることの意味がない。

 だから乗り手はそのどちらを選ぶのか、選択を求められている。「失われゆく佳きもの」として富士重工の集大成である2.5を選ぶのか、はたまたSUBARUの「未来への期待」を込めてe-BOXERを選ぶのか。SUBARUによれば、4割の人が試乗車すらない状態でe-BOXERを選んだという。

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