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「地方の障害者雇用」を創出するリクルートのテレワーク働き方改革で「地方格差」なくせ(2/5 ページ)

» 2018年09月19日 08時30分 公開
[田中圭太郎ITmedia]

HIV感染者も採用 在宅雇用に乗り出した理由

 リクルートオフィスサポートは、在宅雇用を始めてわずか2年で41人を採用している。そのうち18人が身体障害者、23人が精神障害者だ。リクルートに新卒で入社し、7年前からリクルートオフィスサポートの執行役員を務める三井正義さん(55歳)は、地方の在宅雇用を進めた背景には、首都圏で起こっていた「障害者採用の競争激化」を理由に挙げる。

 「リクルートの業績が好調で、グループ全体の人数が増える一方、障害者の法定雇用率も引き上げられてきましたので、毎年新たに採用しました。グループの障害者雇用率は2.372%(6月1日現在)で、法定の2.2%を上回ることができています。

phot リクルートオフィスサポートの三井正義執行役員。障害者雇用に関わり始めて7年目になる

 ただグループの事業拡大に伴う人員増加を踏まえると、法定雇用率を上回るためには障害のある人を毎年数十人採用しなければなりません。ところが、東京都内や関東圏では、障害のある人向けの仕事はたくさんあり、これ以上、採用数を確保するのは厳しい状況でした。どこかで在宅雇用に踏み切り、地方の人を雇わなければ雇用者数を確保できないと以前から考えていたのです」

 リクルートオフィスサポートでは創業当初、身体に障害がある人を雇っていた。当時は公共交通機関でのバリアフリー化も進んでいない状態で、車椅子を使う人は電車通勤ができなかった。そのため、自社ビルの地下に駐車場を整備して自動車通勤を可能にし、フロアも全てバリアフリーにした。設備と環境さえ整えば、障害の有無にかかわらず同じ仕事ができるというスタンスは、創業当時から変わらない。

 その後、聴覚、視覚、精神などさまざまな障害のある人を雇用することになる。13年頃からは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染している人の採用も始めた。HIV感染者は障害者手帳を持っていて、状態が悪くなると重度障害に認定される。抗HIV薬を服用すれば体の中のウイルス量を抑えることができ、服用を続ければ免疫力も回復し、他者に感染させることはない。仕事の能力については何ら問題がないことから、HIVに感染していることをオープンにして働きたい人を募集し、現在では28人が働いている。

 身体障害者、HIV感染者など、障害者の雇用を広げてきた一方、三井さんと経営企画室のメンバーは、同時に在宅雇用の研究も進めていた。

 「HIV感染者の採用と並行して、在宅雇用のプロジェクトを立ち上げました。千葉県内で1人、東京都内で1人を採用し、どのような環境づくりが必要なのかを3年間研究してきました。地方には、能力はあるのに働く場所がなくて困っている人が必ずいるはずだと考えていましたから、めどがついたところで地方の採用活動を始めたのです」(三井さん)

phot 特例子会社の集中により首都圏では採用競争が過熱。いわば「障害者の奪い合い」が起こっている(リクルートオフィスサポート提供資料より)

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