飲み会を開くときに誰が幹事をやるかは悩ましい。参加メンバーへの周知やお店選び、予約や料金の徴収に至るまで、幹事の仕事は非常にわずらわしいからだ。
もし、行動範囲や関心事などの項目を入力するだけで、自動的にメンバーをマッチングし、最寄り駅やお店、気を引く誘い文句まで決めてくれたら、どんなに楽だろうか――。 そんな便利なツールである「ロボット幹事」を形にすべく奮闘しているのが、38歳の“無名エンジニア”である角岡幹篤だ。
2005年に研究職として富士通研究所に入社した中堅社員である角岡は現在、本業としてプロジェクトを管理するサービスの開発に従事する。その一方、「やる気のある人が仲間を作るための技術」を開発すべく、テクノロジーを使って起業家やエンジニア同士の「仲間作り」を支援しているのだ。ロボット幹事はそのプロジェクトの一部である。
彼は会社の人事部や企画部の社員に働きかけ、時には上層部にも直談判することで、会社の活性化のために500万円の予算とさまざまな支援をとりつけるに至った。その裏側にどんな苦労があったのだろうか――。
角岡は学生時代に神経生物学や認知心理学を学んだ。修士論文は「幻肢(げんし)の痛みのメカニズムに関する一考察」――。病気やけがなどで腕をなくしたはずの人の腕に激痛がはしる「幻肢痛」が、どのようなメカニズムで起こるのかを研究していた。
角岡は勉学にまじめに取り組んできた半面、兵庫県の田舎で過ごした小中学校時代、人付き合いの面では失敗してきた過去がある。
「今でいう『コミュ障』だったのかもしれません(笑)。変な奴扱いをされたこともあり、周囲とあまり仲良くすることができませんでした。いじめられ、クラスの皆に無視されていた時期もありましたね。思いやりが足りない面もあったと思っています」
ちょっと浮いていて人付き合いは苦手――。少年時代にこんなキャラクターであった角岡は、大学入学後はサークル活動に参加するなど、積極的に仲間を作るようになっていた。仲間の重要性に気付いたからだ。富士通研究所に入社後も「人々の生活に役立つ商品を作りたい」と意気込んでいたものの、担当したのはネットワークや通信機能の開発であったため、仕事を通じて人の役に立っているという実感はなかなか得られなかった。
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