角岡がロボット幹事など「仲間を作るための技術」を作ろうとした背景にあったのは、研究職の働く環境についての関心だ。
「研究職は2つ隣の列の人が何をしているのかも良く分からない、ある意味閉鎖的とも呼べるような環境で働いています。もっと社外の人と交流して見識を広げたいと、東京だけで探してみても、その候補はあまりに多過ぎます。場所をどうしよう、参加メンバーを誰にしようかといった選択肢を少しでも減らすことで考える負担を軽くし、ロボットが自動的に考えてくれるアプリを作りたいと思ったのです」
会社にいながらにして新しい事業を起こすことにも思いがあった。約5年前、大企業での働き方に疑問を持っていた会社の後輩と、これからの会社人生について良く議論していた。その後輩に対し、当時入社7年目になって少しずつ会社の動かし方も分かってきた角岡は、「やり方次第で会社を変えることはできる」と諭した。しかし、後輩は会社を辞めてベンチャー企業に転身してしまったのだ。
「この時に、本気で会社を変えたいと思いました。やる気のある人が転職するということではなくて、彼らが会社の在り方や組織を動かせるようにするには何をすればいいかと、真剣に考えようと思ったのです」
そんな時、留学のためにシリコンバレーに出掛け、帰ってきた先輩から「ハッカソン」という手法があることを聞いた。ハッカソンとは、短期間に集中してソフトウェアやハードウェアを開発するイベントのことである。テーマは家の小物の開発から社会課題の解決に至るまで多岐にわたり、参加者もビジネスパーソン、エンジニア、デザイナーなど多様だ。
「これだ!」と思った角岡は、有志を集めて、13年に初の社内ハッカソンを実現した。徐々に活動は評価され、社内表彰を受けたほか、第4回目からは人材開発の公式プログラムにも組み込まれることになる。
活動は社外にも広がり、飲料メーカーと共同でハッカソンを開催した。「缶コーヒーのラベルに合わせて顔写真が出せるシステム」などを開発することにつながる。「この手法を応用して多くの企業を活性化したい」。勢いに乗る角岡はこんな大望を掲げたが、すぐに新規ビジネスにつながるほど甘くはないのが現実だ。
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