――フェンシング検定ですか。
改革に当たって、他の競技団体の取り組みを学んでいます。参考になったのは剣道ですね。剣道の級や段の仕組みは非常によくできていると思います。昇給、昇段をしようというモチベーションをどの世代も持つことができますし、高齢の師範クラスの方は、大学チャンピオンと試合をして勝つことは難しいですが、勝ち負けを超え、尊敬される存在になっています。
フェンシングには、剣道のような仕組みや検定制度はまだありません。日本がいち早く世界に通じる検定を作って、幅広い世代が楽しめるようにする。学校訪問とともに、子どもから大人までフェンシングの愛好者を増やす。このような取り組みを考えて実行し、協会の登録者数を現状の6000人から5万人まで増やすのが目標です。
検定は、アジアのマーケットを開拓することにもつながります。アジアでフェンシングが盛んなのは日本、中国、韓国です。アジアの人たちも日本に検定を受けにくるような形ができれば、収益面でも効果が期待できると思います。
――検定は新たなビジネスともいえますが、新しい施策を進めていく上で、今後、組織体制を変えるといったことは考えていますか。
協会の体制は、現在のスタッフを適正に配置することによって仕事を進めていくのが基本ではありますが、大会の収益化や競技人口の増加を目指すに当たって、外部の力もお借りしようと思っています。協会ではビズリーチさんにご協力いただいて、副業・兼業限定の戦略プロデューサーの公募を10月4日から始めました。ビジネスのプロの力を借りて、これまでにない新たなスポーツビジネスを展開したいと考えています。
――太田会長が進める改革が、従来の考え方と大きく異なるのは、選手の強化以外の部分に力を入れるということでしょうか。
今までは、とにかくオリンピックや国際試合などの大舞台で勝てば、それでよかったのです。メダルが取れないと話にならない状態でしたし、金メダルを取ることで補助金が増えていたのも事実です。
しかし、東京五輪が終わって、オリンピックバブルが弾ければ、金メダルを取っても補助金がもらえないという事態が発生するかもしれません。企業がスポーツ団体への協賛をやめる可能性もあります。その時に初めて「金メダルは手段でしかなかった」のだと気付くでしょう。でもそれでは遅いのです。
日本フェンシング協会としては、感動を提供することを第一に掲げ、事務方が実行すべきことをきちんと実行することによって、組織をより強固なものにしていきたい。その結果、もっと多くの人にフェンシングを楽しんでもらえればと思っています。
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