知ってるようで意外に知らない食品ロス問題を“そもそも”から考える流通関係者のジレンマとは?(3/4 ページ)

» 2018年10月11日 06時00分 公開
[石川友博ITmedia]

売りきり施策と値引き

 食品ロスを軽減するためには、売れ残りを売りきる施策が重要となるが、これはとても難しいことだ。売りきり施策として、店舗での値引きを例に説明する。

 1点目は、需要予測が難しくなることだ。頻繁な値引きは、値引き品の購入を目的とした消費者を一時的に引き付け、値引き品の多いときと、そうでないときとの間の需要変動を生む。需要変動は、店舗の需要予測精度を下げるため、売れ残りも生じやすくなる。

 2点目は、値下げの商品管理を行う人員の問題だ。値下げは店舗の粗利を減らすだけでなく、相応の作業を必要とする。その作業が自動化・システム化されていれば問題ないが、多くの小売業では人手に頼っている。しかし、人員不足や育成が追い付かないといった悩みを抱えるケースも少なくないので、売れ残った食品を適切に売り切るのは容易ではない。

どうすれば食品ロス問題は解決するのか

 ここでは流通における業務の見直しを中心に、食品ロス問題の解決の方向性を取り上げる。

(1): 「年月日表示」から「年月表示」への切り替え

 第1に、賞味期限表示の「年月日表示」から「年月表示」への切り替えが挙げられる。食品流通では鮮度順での納入を求められる。賞味期限を年月日で表示している商品なら、納品先から「次回納品は前回納品と同じか新しい日付の商品を」と指定される。それが年月表示になれば、月単位の管理となり、手持ち在庫を効率良くさばけ、食品ロスを抑制できる。また、年月表示化されることで、日付別に分けていた倉庫内保管や車両内の積載を月単位にまとめられ、保管・配送費用削減に加え、人手不足で逼迫する物流現場の負担軽減にもつながる。

 年月表示化への切り替えは波及効果が大きく、これまでに味の素、キユーピーなどの調味料メーカー、日本コカ・コーラ、サントリーグループなどの飲料メーカー、江崎グリコなどの菓子メーカーが切り替えを進めている

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(2): 納品期限・販売期限の見直し

 店舗への納品期限の緩和により、小売店舗までの中間流通や製造において、在庫や納品期限対応のための追加生産が削減される。店舗への納品期限が、製造日から賞味期限までの最初の3分の1から2分の1になれば、飲料と賞味期限の長い菓子(180日以上)だけでも約4万トンの食品ロス削減につながる 。

 納品期限緩和の先頭を走るのがコンビニで、ほぼ全てのチェーンで、飲料と賞味期限が180日以上の菓子の納品期限は、製造日から賞味期限までの最初の「2分の1」になっている。さらに、緩和対象品目の拡大を検討しており、一部地域でカップ麺を対象に、実証実験と結果の精査が行われている。問題がなければ、さらなる食品ロス削減に向け実運用を見直す方針だ。

 店舗での販売期限の延長も重要で、もっと賞味期限ギリギリまで販売すれば、食品ロスは確実に減る。2017年度に京都市が行った社会実験では、日配品の販売期限を賞味期限当日とすることで、廃棄数量が10%削減された。また、同時期の京都市の小売業調査において、賞味期限当日まで販売を続ける市内の小売業者を対象に、「賞味期限当日まで販売を続けることへの消費者からのクレームの有無」を尋ねたが、ほぼないことも明らかになった。販売期限を見直せる余地は十分あるのではないか。

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