知ってるようで意外に知らない食品ロス問題を“そもそも”から考える流通関係者のジレンマとは?(4/4 ページ)

» 2018年10月11日 06時00分 公開
[石川友博ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4       

食品ロスを減らす残りの施策は?

(3): 商品入れ替えプロセスの見直し

 商品入れ替えプロセスの見直しとは、新商品の導入および定番カット品(新しい商品への入れ替えや商品の規格変更のため、店頭から撤去される食品や商品)の終売時における流通上の業務プロセスを、食品ロスが発生しにくい方法に見直すことである。

 新商品の導入プロセスでは、取引先との間で新商品の発注情報の共有を早期化する。ローソンやファミリーマートが実施しており、ファミリーマートでは2016年1月以後、各店舗での新商品の発注を、発売前週から行える仕組みに変更。入力された情報を、情報システム上でパンメーカーと共有している。メーカーの予測精度は大きく向上し、食品ロスの発生抑制につながっている。

photo

 定番カット品の終売プロセスの見直しとは、定番カット予定品については、卸売業はメーカーへの発注を止め、既存の物流センター在庫分のみで店舗発注に対応する。小売業も店番カット予定品については店舗からの発注に100%応えることは要請せず、欠品を許容する。物流センターの商品を売りきることが可能となり、返品・廃棄の削減につながる。この仕組みはローソンが導入している。

(4): AIやIoTを需要予測の精緻化に使う

 食品ロスや返品の要因となる過剰生産や在庫は、顧客情報・販売実績情報を手に入れて、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を使っていけば削減できる。日本気象協会は、気温や湿度、降水量などの気象データとPOS(販売時点情報管理)データをAIで分析し需要を予測するモデルを構築。ミツカンや相模屋食料などとの実証実験で、食品ロスを最大3割削減する成果を出した。

 現在、製・配・販の情報共有は、販売計画・販売実績・売場内動向などの情報共有にとどまっている。しかし、製・配・販各層がAI、IoTを使って効率的にデータを収集・処理して需要予測を行い、その結果を持ち寄ることで、予測をさらに精緻化し、食品ロスをさらに減らせる可能性があると思われる。そのためには、今まで以上に製・配・販の緊密な連携が必要となるだろう。

著者プロフィール

石川友博(いしかわ ともひろ)

1972年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。旧・パナソニック電工(現・パナソニック)、コンサルティングファーム勤務を経て、2010年に公益財団法人・流通経済研究所に入職。消費財メーカー・卸売業の営業政策や流通効率化などの調査研究に従事。(特に流通商慣行問題に詳しい)。農水省、および鳥取県など複数の地方自治体の食品ロス削減事業で事務方やアドバイザーを務める。流通経済大学非常勤講師(2018年まで)。


前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.