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なぜか心をざわつかせる「マラソン社員」から何を学ぶのか常見陽平のサラリーマン研究所(3/3 ページ)

» 2018年10月12日 07時30分 公開
[常見陽平ITmedia]
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マラソン社員から学ぶべきこと

 サラリーマンの趣味の中でも「マラソン」は格上感がある。いや、お金のかかる趣味は他にもいくらでもある。ゴルフ、サーフィン、スノーボードは序の口。経営者の中にはクルージングやカーレースなどを趣味にしている者もいる。

 マラソンはこれらに比べると、お金がかからない。ただ、ストイックさが半端ない。なぜ自分と同じように仕事をしながら、時間を捻出し、マラソンを続けることができるのか。継続する力やタイムマネジメントについては、学ぶべきことがあるのではないか。

 もしSNSでつながっている人に、マラソン社員がいたら、投稿を1週間分くらい振り返ってみよう。早朝に起きて5キロ走る者、帰宅前に皇居を1周する者など、彼らは時間のつくり方、使い方がうまい。また「○○さんは、マラソンをしていて、ストイックな素晴らしいお方だ」というセルフブランディングが功を奏しているといえる。

 ひねくれた見方をすれば、彼らは時間を確保するための、“ブロック力”が強いのである。マラソンの練習をするために時間を確保すること、予定を断ること、がうまいのである。自分の時間を確保するために、「プライベートを優先し、予定をブロックする」能力は大切だ。もちろん、マラソンをするためにサボるという局面もあるかもしれない。それはそれでサボり方を学ぼうではないか。

 繰り返しになるが、マラソン社員は自分らしさを貫き、周りに理解してもらう能力が高いのである。そこから私たちは何を学べることができるのか。ポジティブな内容であれ、ネガティブな内容であれ、周囲の人に納得してもらうワザを身につけることができるのではないだろうか。もちろん、「仕方がないな」と思われるシーンが出てくるかもしれないが、それは何かで補えばいいだけのことである。

 最後に、マラソン社員と同じくらいに関心のある人たちがいる。朝の10時からラーメン二郎に並んでいるスーツ姿の人がいる。午後3ごろに新橋などで飲み歩いている人もいる。彼らはどのようにして周囲の人たちを「納得」させているのだろうか。この研究は、別の機会に。

常見陽平のプロフィール:

 1974年生まれ。身長175センチ、体重85キロ。札幌市出身。一橋大学商学部卒。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。

リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。長時間の残業、休日出勤、接待、宴会芸、異動、出向、転勤、過労・メンヘルなど真性「社畜」経験の持ち主。「働き方」をテーマに執筆、研究に没頭中。著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』『エヴァンゲリオン化する社会』(ともに日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)『普通に働け』(イースト・プレス)など。


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