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「情熱は大事、ただしそれだけではうまくいかない」 元官僚のベンチャー社長が持つ覚悟rimOnO・伊藤慎介社長が語る(2/4 ページ)

» 2018年10月12日 08時23分 公開
[伏見学ITmedia]

国家プロジェクトでイノベーションは起きない

 伊藤氏は小学4年生から6年間、米国で暮らした。当時はバブル真っただ中で、日本経済は世界を席巻していた。そうした母国を外から見ていた伊藤氏は、日本のモノづくりの強さを改めて知るとともに、文化や歴史など日本にはほかにも魅力があることを世界に認めさせたいという思いを持つようになった。

 その情熱を抱き続け、京都大学大学院工学研究科を卒業後、通商産業省(現経産省)に入ったのは必然と言えるだろう。入省してからは「日本の産業をどうするべきか」と日夜議論を重ねた。

経済産業省 経済産業省

 電気自動車やスマートハウスなどの国家プロジェクトにも携わったが、数年ごとの人事異動が宿命であるため、結果的にさまざまな分野を転々とした。その場その場では全力で問題解決や事業創出などに打ち込んだが、1つのことに腰を据えて仕事ができない環境にどこかでむなしさも感じていた。

 熱量は溢れんばかりだったが、国家プロジェクトでイノベーションを起こすのはほぼ不可能だと思った。

 「国が看板を掲げるプロジェクトは、民間企業からすれば本心からやりたいのではなく、国に乗っかりたいという気持ちがあるケースも少なくないでしょう。結局、そういうプロジェクトだと、国でリーダーシップをとる担当者がいなくなれば消化試合に入ります。国家プロジェクトがうまくいかないのは、熱量を発揮できる場になっていないから。中途半端な状態で時間とカネだけを使っています。本気でイノベーションを起こしたいなら国のカネに頼らずに自らがやるべきだと感じたのです」

 そう決めたら、経産省を辞めるのは早かった。半年経たずに退職したという。当然、周囲からは反対の声などがあった。「自分の人生をどうするかは、誰かが答えを与えてくれるものではありません。自分で決めるしかない。それがなぜ大事かと言うと、自分で決めれれば後悔しないから。もちろん、自分の決断に対しては誰も責任を取ってくれない。リスクもあるでしょう。けれども、僕自身は起業したことは後悔してない」と伊藤氏は力を込める。

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