外国人材受け入れをもっと 法の壁に風穴開けた就職支援会社社長の執念日本で働けない外国人の無念背負う(3/3 ページ)

» 2018年10月17日 14時30分 公開
[服部良祐ITmedia]
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「だったら法律の方を変えよう」

 せっかく就職を支援したのにうまく就労の許可が下りず、涙を飲んで母国に帰っていく外国人も何度も見てきた。日本でメークの専門学校を卒業したある台湾人女性は化粧品会社で働く話が進んでいた。中国語と美容の技術を生かし、空港の免税店で訪日客などにメークキャップを施す仕事に就くはずだった。

photo 研修会や講演などを通じ外国人採用について情報発信してきた竹内さん

 専門学校卒の外国人は在留資格を取る際、大卒より「専門性」が求められる傾向にある。グローバルパワーはこの女性の成績表などを入管に提出して入念に交渉したものの、返答は「専門性が無いので駄目」。メークキャップを単純作業と判断したとみられる。女性は「なぜ資格をもらえないのか理解できない」と激怒して台湾に帰った。

 「僕らは最大限やったが駄目だった。こんなことは今までごまんとある話。法律は法律であり守らないわけにはいかない。だからこそ法律の方を変えようと思った」(竹内さん)。

 外国人の就労に多くの条件を課してきた入管法に風穴を開けようと竹内さんらが16年に創設したのが一般社団法人・外国人雇用協議会だ。クールジャパンやインバウンドといった日本社会に受け入れられやすい利点を盛り込んだ政策を、政財界に根気よく提言し続けた。影響力を強めるため、自身の人脈を駆使して会長に堺屋太一氏、顧問には竹中平蔵氏に田原総一朗氏と著名人も結集した。

 本業の傍らメディアにも多く露出して駆けずり回った竹内さんたちの努力が実り、10月には法務省が新たな在留資格「特定技能」を19年4月から2段階で設ける骨子案を発表した。「高度な人材」に限定されていた就労資格が単純労働者にも広がることになる。

 「日本が好きで来てくれたのに泣く泣く帰っていった外国人たちの悔しい思いが僕の背中に乗っかっている。彼らを受け入れなかったら日本の生産年齢人口は減少する一方だ。世界全体での労働力の獲得競争にも負け、誰にも見向きもされなくなる国になってしまう」(竹内さん)。

 竹内さんは、今後は就労目的で訪日した外国人にしっかりした待遇や教育を施して、日本社会に定着してもらえるようにすべきと語る。「低賃金の労働力を入れただけで日本経済は活性化しない。彼らは母国に送金するだけで日本でお金を使わないからだ。日本文化になじんでもらい、家族も連れてきてもらう必要がある」。法改正のその先を見据え、今日も外国人と日本企業をつなぎ続ける。

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