「全国のホステルに泊まり放題」が広がれば、どんな人が増えるのか水曜インタビュー劇場(お帰り〜公演)(2/7 ページ)

» 2018年10月31日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

ホステルを運営することになったきっかけ

土肥: 柚木さんは大学を卒業して、農林水産省で働いていたそうですね。霞が関でバリバリ書類などを作成していたと思うのですが、2017年5月にホステル「Little Japan」を手掛けることに。チョー安定な生活を捨てて、なぜホステルを運営することになったのでしょうか?

柚木: 学生時代にゲストハウスでアルバイトをしていました。住み込みで働いていて、「いつかは自分もこんな仕事をしたいなあ」と漠然と考えていたんですよね。そのときには「老後の楽しみのひとつ」といった感覚で、「いますぐ絶対にやりたい!」という気持ちはありませんでした。

 その後、農水省で働くことになるのですが、そのときも「会社をつくる」なんて全く考えていませんでした。周囲の人間を見ても、海外に留学したり、MBAを取得したり。転職組は国際機関で働いたり、外資系のコンサルで活躍したり。そんな人たちを見て、「キャリア官僚が選択するような道を自分も歩むんだろうなあ」と思い描いていました。

1階にあるカフェ。ここで食事を楽しむことができる

土肥: 学生時代から一生懸命勉強して官僚になれたわけなので、そのように考えるのがフツーと言えばフツーですよね。

柚木: 国は成長戦略のようなモノを発表していますが、すべて達成できるわけではありません。実態と中身に乖離(かいり)があるなあと思っているうちに、自分がやりたいことは何かといったことを考えるようになりました。

 そして、東日本大震災が起きました。現地に足を運んだときに、自分は文章を書く仕事ではなくて、現場で働きたいという気持ちが強くなってきたんですよね。人口が減少していて、自分も空き家を抱えている。そうした問題を解決するにはどうすればいいのか。12年にNPOを立ち上げ、シェアハウスやコワーキングスペースの運営に携わることに。

 こうした経験を積んでいくうちに、やがて「このまま公務員として併走するのは難しいな」と感じ、学生のころにぼんやりと描いていたホステルを立ち上げようと決めました。空き家を活用した施設をつくるために、17年1月に退職して、翌月に会社を立ち上げました。

宿泊者専用の畳のラウンジ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.