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超売り手市場なのに「事務職志望の女子学生」があぶれる理由激変の新卒採用サバイバル(3/3 ページ)

» 2018年11月05日 07時00分 公開
[服部良祐ITmedia]
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ズレる企業ニーズと女子学生の価値観

 学生を企業に送り出す大学側も苦慮している。昭和女子大学(東京都世田谷区)では例年、みずほFGに多くの学生を就職させてきた実績を持つ。ただ、キャリア支援センターによると18年卒では34人が就職できていたのに対し、19年卒の内定者は10人程度に落ち込む見込み。やはり一般職枠の激減のあおりを食らったとみられる。

 同センター長の磯野彰彦教授は「専業主婦を希望するような女子大生は減ってきている。しかし一般職志望はいまだに根強い。残業や転勤、昇進や部下を持つことを求めず上昇志向が低めで、土日はちゃんと友達と遊びたいという学生はいる」と説明する。

 一方で磯野教授がキャリア支援のレクチャーをするため大学に来るメガバンクの人事担当者と話すと、彼らの一般職に求める人材像は明らかに変化したと感じるという。「窓口でニコニコ接客するだけでなく、語学や営業の能力も求められてきている。銀行に一般職として入ってはいるが、新人のうちから重要な仕事を与えられている卒業生も既にいる」(磯野教授)。狭き門になってはいるが高い能力を求められるメガバンクの一般職こそキャリアアップでは狙い目とみて、授業や説明会で学生の意識や能力の向上に取り組む。

 企業側のニーズと女子学生の価値観のズレが生んだ今回の内定率減少。冒頭の大木さんは企業説明会で人事担当者から産休・育休制度が充実していると強調されるたびに、自分よりも“バリキャリ志望”の学生が求められていると感じたという。「『事務職は減っていてITやロボットにやってもらう時代になっています』と言われた。やっぱり事務を手作業でやる時代ではないのかな。でも、『事務職でもキャリアアップして営業担当になったりします』という会社はあまり受けていない。事務職に魅力を感じるのは、やはりワークライフバランスが良いから」。

 技術の進歩で企業のあり様が急激に変化しても、そこで働く人の心はすぐに変わらない。企業の人材ニーズと学生の理想の働き方のズレは、単なる需給のすり合わせにとどまらない採用の難しさを示している。

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