ローソンが目指す近未来の“デジタルコンビニ”と顧客体験の全容日本特有の課題にアプローチするリアル店舗の戦略とは

アマゾンやアリババはITを活用した店舗の展開に力を入れている。一方、ローソンも他の小売企業と同様にさまざまな分野でデジタル化を推進しているのだが、目指す方向性はアマゾンやアリババとは違うものだという。ローソンが描く“デジタル化されたコンビニ”とは?

» 2018年11月06日 10時00分 公開
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 日本の小売業者は急速な勢いで“デジタル化”を進めている。EC対応はもちろん、決済方法や需要予測に新しいテクノロジーを生かし、厳しい競争環境を勝ち抜こうとしている。また、顧客の購買履歴などのビッグデータを分析して新たなビジネスチャンスを生み出す取り組みも始まっている。例えば、ショッピングセンターの運営を行うパルコは2014年に「POCKET PARCO」というスマホアプリをリリースした。これは、買い物の金額に応じてポイントを貯めたり、ショップからおすすめの情報が届いたりするものだが、パルコは顧客1人1人の行動を分析することができる。同社は蓄積したデータをもとに新たな戦略を打ち出そうとしている。同社だけでなく、蓄積したデータをAIなどを活用して分析する取り組みは広まってきている。

 では、小売業の最先端を走るローソンは、世界的なデジタル化の潮流をどのように分析し、どのような次世代型コンビニを目指しているのだろうか、同社理事執行役員でオープン・イノベーションセンター長の牧野国嗣氏に話を聞いた。

photo ローソン理事執行役員 オープン・イノベーションセンター長の牧野国嗣氏

海外と日本で違う環境

 海外における最先端の小売り店舗には、米アマゾン・ドット・コムの食品スーパー「Amazon Go(アマゾンゴー)」やネット通販最大手アリババ集団が中国を中心に展開している生鮮スーパー「盒马鲜生(ファーマーションシェン)」がある。

 アマゾンゴーにはレジがなく、店内に設置された100個以上のカメラが顧客の買った商品を分析し、スマートフォン(スマホ)上で決済をする。アリババが運営するファーマーションシェンでは、商品についているQRコードをスマホで読み取ることで、詳細な情報を閲覧できたり、自宅まで配送してもらったりすることができる。

 米国と中国のこうした動きに共通しているのは「徹底したデジタル化」という点だが、牧野氏は店舗運営から完全に人がいなくなったわけではないと指摘する。

 まず、店舗のバックヤードでは多くの従業員が働いている。レジはないのだが、総菜をつくったり、店内を陳列したりする従業員が同じ店舗内にいる。実際の店舗運営をするうえで、スタッフが必要な業務は多く残っている。

 こういった店舗と日本におけるコンビニの違いは、店員による接客をどこまで重視するかということだ。そして、このことがローソンの目指す“次世代型コンビニ”の戦略に大きく関係するという。

photo 生鮮スーパー「盒马鲜生(ファーマーションシェン)」
photo 生鮮スーパー「盒马鲜生(ファーマーションシェン)」

レジがあることで来店動機になる

 ローソンでは、「レジがある」「店員の接客を受けられる」というリアル店舗を軸としたデジタル化を進めるという。

 ローソンが目指すのは「顧客が来店することで、『楽しい』『便利だ』『ほっとする』と感じてもらう戦略」(牧野氏)だ。ただ、これは、リアルな接客を重視して、デジタル化を後回しにすることを意味しない。需要予測や商品の発注といった裏方の仕事をデジタル化することで効率化し、従業員が接客する余裕を生み出す狙いがある。

 まず、ローソンがリアルな接客を重視する背景について解説しよう。

photo ローソンスマホペイの決済イメージ

 都市型の店舗は来店客数も多く、朝やランチタイムには店が非常に混雑する。そのため、都市型店舗に求められる主なサービスはスピードになる。ローソンでは「ローソンスマホペイ」というアプリを使い、レジに並ばず、店内どこでも決済が可能となるサービスを一部店舗で提供している。

 一方、住宅地や郊外に立地する店舗では高齢者や主婦といった顧客が多い。こういった店舗では、店員と顧客が顔なじみになっているケースが多く、地域の高齢者の“見守り拠点”としての役割も果たしている。顧客に対し「人と触れ合える」という価値を提供しているのだ。例えば、ローソンは、カフェブランド「MACHI cafe(マチカフェ)」を展開しているが、大手3社の中で唯一商品の手渡しにこだわっている。それは、従業員と顧客の自然なコミュニケーションが生まれるきっかけをつくろうとしているからだ。

リアルな有人店舗があることで提供が可能になるサービス

 コンビニは日本各地にあり、誰でも気軽に訪れることができる。この特徴を生かすことが、顧客に新たなサービスを提供することが可能になると牧野氏は指摘する。

 これまでローソンは、他業種と組んで収納代行や宅配便といったサービスを手掛けてきた。そして、現在、シェアリングサービスの登場といったように、デジタル技術を生かした新サービスが次々と生まれている。こういった新サービスが苦手とするのは、リアルなサービス拠点の整備だ。そこで、ローソンではこういった企業と組んで、新サービスを顧客に提供する「究極のサービス拠点」(牧野氏)となることを目指している。

 顧客にとってみれば、これまでは「お金の振込は銀行」「荷物の受け取りは自宅か宅配便事業者の拠点」といったように、ある用事を済ますのに別々の場所に足を運ばなければいけなかった。しかし、ローソンがこれらのサービスの窓口になることで、1店舗で全ての用事を済ますことが可能となる。さらに、店舗に立ち寄ったついでに店内の商品を買ってもらえれば、一石二鳥というわけだ。

ローソンの戦略が日本市場で有効な理由

 ローソンが打ち出す戦略は、多くの読者がイメージするような“最先端のデジタル戦略”とはやや異なるようにみえる。しかし、その背景にあるのは、米国や中国と違う顧客の購入スタイルと企業の戦略の違いだ。

 米国では、郊外の大型店に車で出かけ、1週間分の食料や日用品をまとめ買いするスタイルが普及している。自宅から1時間以上かかるケースもあるが、圧倒的な安さという価値が顧客を引き付けている。近年、アマゾンがリアルな店舗を脅かしているのは、大型店と同じ値段の商品を宅配するようになったからだと牧野氏は分析する。

 一方の中国では、通販大手がオンライン上で激しい競争を繰り返してきた。顧客の購買データなどを活用したデジタルマーケティング関連の「施策はほぼやりきった状況」(牧野氏)だ。そこで、通販大手は差別化のために、リアル店舗の運営に乗り出している。

 日本ではコンビニが“社会のインフラ”として機能している。人口減少に伴い過疎化した地域では病院や銀行といったインフラは存在できなくなる可能性があるが、全国に約5万8000店舗あるコンビニであれば、これらを吸収した街のプラットフォームになることができる。また、便利な新サービスは利用したいが、デジタル技術に疎い高齢の顧客の増加も見込まれる。こういった日本特有の市場を踏まえ、ローソンはリアル店舗を戦略の核に据えている。

デジタル化で従業員を支援する

 では、ローソンはリアル店舗におけるサービスを強化するために、どのようなデジタル化を進めようとしているのだろうか。

 ローソンでは、地域ごとに異なる顧客のニーズを分析し、店内の品揃えや棚割りを決めている。これまでは、オーナーとスーパーバイザー(SV)がPOSデータを分析したり、顧客の購買動向を直接観察したりすることで、日々の戦略を練ってきた。しかし、この方法では深夜の時間帯における顧客の購買行動の詳細な分析ができないといったデメリットもあった。そこで、店内のカメラやセンサーを活用し、画像解析の技術も取り入れながら、顧客の購買行動を分析する実験を一部店舗で進めている。具体的には、顔認証技術を使って来店客を「30代男性」などと認識し、店内でどんな商品を買っているのかを探ろうとしている。もちろん、分析をする際は、個人が特定されないように情報の扱いには細心の注意を払っている。今後、画像解析の技術が向上し、より低コストで利用できるようになれば、店舗における顧客の動線分析が容易になり、棚割りの決定にも生かせると期待している。

photo ローソンはデジタル化を推進して従業員の業務負担の軽減を狙う(写真はイメージ)

 デジタル化を推進することで発注業務も効率化できる。ローソンでは店員が1日に何度か店内の在庫状況などを踏まえながら商品を発注している。発注の際、ローソンでは各店舗での売り上げ動向や客層、天気、曜日といったさまざまなデータを踏まえて、「この商品を何個仕入れるといいですよ」という各店舗に則した推奨値が発注画面に表示される。店員は推奨値を踏まえて最終的な発注をするのだが、この仕組みを「セミオート発注」と呼んでいる。ローソンでは、AIなども活用しながら、より精度が高い推奨値が計算できるよう取り組んでいる。推奨値の精度が高くなれば、店員は発注業務に時間を割かなくても済むようになる。

 ローソンは今後、AIをどのように活用しようとしているのだろうか。

 その方向性を示唆する展示が、10月中旬に幕張メッセ(千葉市)で開催された「CEATEC(シーテック) JAPAN 2018」で明らかになった。シーテックはITや電機分野の国際見本市で、ローソンも出展した。ローソンの会場には「バーチャルクルー」と呼ばれるローソンの制服を着たキャラクターが登場し、顧客の購買履歴や健康状態をもとに、最適なサラダの組み合わせを提案する展示がされていた。将来的には顔認証システムやAIを生かして本格運用を目指すという。

 また、牧野氏は「AIを新しい分析手法として検討している」と説明する。AIを使えば、これまで人が分析してきたPOSデータや顧客の購買履歴を別の角度から切り取ることができるため、「これまでなかった気付きを与えてくれる」と考えている。また、「AI」と一口にいっても、非常に幅広い概念なので、どのような切り口で使えるのか、試行錯誤をしているところだという。

未来の“デジタル化”されたローソンはどうなるのか

 これらの“デジタル化”が進むことで、近未来のローソンはどのような変貌を遂げるのだろうか。

 まず、都市型店舗ではローソンスマホペイやセルフレジが続々と配備され、ビジネスパーソンを中心とした忙しい顧客はパパっと買い物ができる。お昼休みにレジに並び、イライラする必要はなくなる。

 住宅地や郊外型の店舗では、高齢者や主婦の顧客に対してより丁寧な接客ができる。頻繁に店舗を訪れる顔なじみの顧客に対して、新商品を提案する余裕が生まれる。それほど頻繁に訪れない顧客であっても、過去の購買行動をもとに商品を推奨する仕組みができているかもしれない。さらに、これまでは欲しい商品をパパっと購入することがコンビニの価値であったが、店内のイートインなどでゆっくりと時間を過ごすことが価値になる。

 民泊のようなシェアリングサービスを利用する拠点としての存在感も増しているため、ローソンでは一部店舗で民泊利用者に向けて、鍵の受け取りや返却が可能なサービスを提供している。今後、最新のデジタル技術を活用した新サービスが次々に増えたとしても、顧客は従業員の説明を受けながらそれらのサービスを利用できる。

 ローソンはシーテックに小売業として初めて出店を果たした。この姿勢自体が、同社がデジタル戦略を重視するものを示すものだ。今後、どのようなデジタル技術を生かしたコンビニとして進化しようとしているのだろうか。

ビジネスを強化するアリババクラウドとは?

 今回の記事で触れられているように、小売業界の最先端を行くローソンでは日本独自の競争環境を踏まえたデジタル化を進めている。デジタル化を推進することで、業務を効率化したり、新たな顧客体験を生み出したりするのは多くの企業にとって避けては通れないテーマだ。

 そこで、今回はアリババのリテール事業を支えるクラウドベースシステムである「アリババクラウド(Alibaba Cloud)」を紹介しよう。

 アリババクラウドは世界中の230万以上ものユーザー に利用されており、日本ではソフトバンクとアリババの合弁会社であるSBクラウド株式会社(東京都・港区)が提供している。

 アリババクラウドには小売業者の競争優位を維持するためのさまざまなソリューションがある。例えば、各店舗のPOSや在庫のデータを最適に可視化することで、地域限定のオファーやキャンペーンを企画できる。また、顧客のデバイスやPOS端末などのさまざまなソースからデータを引き出して、閲覧履歴や過去の購入を分析し、将来のショッピングニーズを予測できる。こういったソリューションを活用すれば、効果的なマーケティングを実現できる。

 アリババクラウドはすでに大きな実績を上げている。アリババは、光棍節(11月11日)に、世界最大規模のオンラインショッピングフェスティバルである「独身の日」を毎年開催している。2017年11月11日の取扱高は過去最高の1682億元 (日本円で3兆円弱、1元17円換算)を達成した。1日にこれほどの注文が集中したにもかかわらず、大きなシステムトラブルは発生しなかった。

 クラウドベースのサービスならではの利点もある。それは、運用における高い拡張性と俊敏性だ。複雑なITインフラストラクチャの運用管理にかかる経費を削減しつつ、自社の必要性に応じたシステムを迅速に構築できる。

 自社のデジタル戦略を推進するツールとして導入を検討してはいかがだろうか。


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提供:SBクラウド株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2018年11月18日