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日本企業で外国人留学生の採用が進まない真の理由激変の新卒採用サバイバル(2/3 ページ)

» 2018年11月06日 07時10分 公開
[服部良祐ITmedia]

留学生の採用は「買い手市場」

 同社とピョーさんを引き合わせたのが、東南アジア出身の留学生や社会人の採用支援を専門に手掛けるNODE(東京都新宿区)だ。留学生は同社のサイトに登録し、掲載されている求人にエントリーする。担当者が留学生と面談して日本語などをチェックし、十分な能力だと判断できれば企業に紹介する仕組みだ。

 同社の渡邉健太社長は今の留学生の採用事情について「買い手市場」とみる。「ごく一部の優秀な層は引く手あまただが、そこまででもない多くの留学生にとって日本企業の選考は相変わらず厳しい」。特に大企業は日本語能力を厳しく求める場合が多い。

photo 東南アジアの留学生の就活を支援するNODE(同社HPから引用)

 また渡邉さんは、留学生は日本人学生より圧倒的に就職の情報が不足していると指摘する。「母国の出身者のコミュニティーにしか入っておらず、大学で(日本人学生同士の)コミュニティーに入っていない留学生には情報が入ってこない」。さらに、内定まで複数回の面接を受ける必要があり時間がかかるスケジュールや、全員が同じ給与でスタートするシステムに違和感を覚えている留学生は多いという。

「日本の就活、これほど急ぐとは……」

 こうした日本独特の就活の慣習になじめず、内定を得られないまま帰国する留学生も少なくない。マレーシア出身のモハメドさん(25、仮名)は母国の大学で3年間日本語を学んだあと、国立の豊橋技術科学大(愛知県豊橋市)に3年生として編入した。

 マレーシア政府の奨学金による留学で専攻は機械工学。日本語の聴き取りは比較的得意だが、しゃべり方にはなまりが残る。むしろ英語の方が上手といい、TOEIC900点の腕前だ。子どものころに好きだった「仮面ライダー」から日本に興味を持った。母国の経済に不安を感じていたことと、日本の技術を働きながら学びたいと思ったため、家族を経済的に心配させないためにも大学院進学でなく日本での就職を志した。

 16年、4年生の夏ごろに日本人学生より遅れて就活を始めた。留年したため学費や生活費に充てる奨学金が足りなくなり、アルバイト代で補う生活を送っていた。再び奨学金をもらえるようになるまで、就活できるほどお金の余裕がなかったというのが直接の原因という。ただ、当時は日本の就活のシステム自体をそれほど分かっていなかったと振り返る。「マレーシアで就活は卒業後にするもの。周囲の同級生は日本人もマレーシア人も進学する人がほとんど。(日本の就活が)これほど急いでやるものとは思っていなかった」。

 大手就活サイトに登録し、工場勤務のエンジニア職を中心に25社ほどエントリーした。やはりSPIにはスピードが追い付かず苦戦。当時は奨学金をもらっていたものの、やはりリクルートスーツやカバンの費用、面接で上京するための交通費が重荷となった。「日本では就活に“制服”があるのが不思議です。特に手提げの特別なカバンが必要なのは変」(モハメドさん)。

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