実際のところビデオソフトが無くなって、アニメビジネスは回るのだろうか? 現状では、一部はそれが当てはまっている。ただ配信会社やゲーム業界がいつまでもアニメにお金を出し続ける保証もない。00年代半ば、アニメ製作に積極投資したパチンコ・パチスロ関連企業が、業界の勢いが弱まるとともに存在感を薄めたことは参考になる。
もう1つ忘れがちなのは、ビデオソフトはいまでも依然大きなマーケットであることだ。年間500億円規模は、400億円から700億円の間を揺れ動くアニメ映画興行、成長を続けるアニメ配信の478億円(16年)と並ぶ。
さらにビデオソフトへのニーズも、今後も続く可能性が十分にある。これはいち早く日本アニメのビデオソフト市場が縮小した米国が参考になるだろう。
米国では00年代半ばに、日本アニメのビデオソフト販売が急激に縮小した。一般財団法人デジタルコンテンツ協会の「デジタルコンテンツ白書 2018」によれば、最盛期の03年に約5億ドルあったマーケットは10年には2億ドルまで萎んだ。米国では日本アニメのビデオソフトマーケットは滅びたと思われがちだ。
ところが17年の販売金額も2億ドルだ。市場縮小は止まり、ここ7、8年は堅調なのである。
筆者は、7月にロサンゼルスで開催された米国最大の日本アニメイベント、「Anime Expo 2018」に行ったのだが、そこでもビデオソフトの元気の良さに驚かされた。現地の大手アニメ会社ファニメーションのブースでは「ドラゴンボールZ」といった人気作のビデオソフトが山と積まれていた。商品の真上には、同社の配信サービス「FUNimation Now」を告知するサイン。ビデオソフトと配信の両方が主力商品である。
同じ「Anime Expo 2018」のセンタイ・フィルムワークスのイベントにも行ってみた。萌え系や美少女アニメを得意とするアニメ企業だ。ここではビデオソフトの新タイトルのリリースを発表するたびに会場から歓声が上がった。目玉は現地の声優による英語吹き替えである。日本での放送と同時展開を目指す配信は英語字幕になることが多い。時間に余裕のあるビデオソフトならではの差別化だ。
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