一方で、無駄なものには一切お金をかけない。例えばチラシ。特売情報を新聞折り込みチラシなどで広く配布するのが業界としては普通だが、サンヨネはやらない。14年前の蒲郡店オープンのときすらもチラシを配布せず、口コミのみで現在の評判を少しずつ獲得したという驚きの歴史もある。
「蒲郡店のスタッフの約8割が地元採用です。開店当初はまだ業務に慣れていないので、大勢のお客さまが来たらミスが多発して失礼なことになってしまいます。それは長い目で見てファンを作ることにはなりません」
ここで120年以上の歴史を持つサンヨネの強みが見えてくる。長期的な視点に立った経営ができていることだ。もしも短期的なもうけだけを考えるのであれば、人件費を極限まで下げてオープンセールなどで売り上げを最大化することを考えるだろう。しかし、それでは優秀な人材が安心して働き続けることはできず、商品も「安かろう悪かろう」が基準になり、ファンができるはずがない。サンヨネはこの逆を走って成功しているのだ。
ファンは無理を言わない。むしろ応援してくれる。例えば、上述した営業時間。会社勤めの共働き夫婦であれば、「もう少し遅くまで店を開けてほしい」が本音だろう。しかし、「従業員も自宅で家族と夕食を取れるように早めに閉める」という理由であれば地域住民は納得する。
サンヨネは商品を国内外から集めているが、働く人たちの多くは地域の住民である。客の親や子どもが働いているのだ。その家庭生活を軽視した経営ではファンを獲得できるはずがない。
小売店では定番のポイントカードもサンヨネには存在しない。ファンがいるので不要なのだ。こうした常識破りのコストカットによって利益を確保し、その半分は社員に還元される。社員のコスト意識は自然と高まるだろう。
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