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午後7時閉店でも店長年収1000万円超え! 愛知県「地元密着スーパー」絶好調の秘密折り込みチラシなし! ポイントカードなし!(3/5 ページ)

» 2018年11月20日 07時00分 公開
[大宮冬洋ITmedia]

ファンを獲得できれば、折り込みチラシもポイントカードも要らない

 一方で、無駄なものには一切お金をかけない。例えばチラシ。特売情報を新聞折り込みチラシなどで広く配布するのが業界としては普通だが、サンヨネはやらない。14年前の蒲郡店オープンのときすらもチラシを配布せず、口コミのみで現在の評判を少しずつ獲得したという驚きの歴史もある。

 「蒲郡店のスタッフの約8割が地元採用です。開店当初はまだ業務に慣れていないので、大勢のお客さまが来たらミスが多発して失礼なことになってしまいます。それは長い目で見てファンを作ることにはなりません」

phot サンヨネ社長の三浦和雄さん(中央)。左は農業流通アドバイザーの新村均さん、右はぶどう農家の長男でサンヨネにて修業中の宮川大輝さん。三浦さんの人脈は幅広くて深い

 ここで120年以上の歴史を持つサンヨネの強みが見えてくる。長期的な視点に立った経営ができていることだ。もしも短期的なもうけだけを考えるのであれば、人件費を極限まで下げてオープンセールなどで売り上げを最大化することを考えるだろう。しかし、それでは優秀な人材が安心して働き続けることはできず、商品も「安かろう悪かろう」が基準になり、ファンができるはずがない。サンヨネはこの逆を走って成功しているのだ。

 ファンは無理を言わない。むしろ応援してくれる。例えば、上述した営業時間。会社勤めの共働き夫婦であれば、「もう少し遅くまで店を開けてほしい」が本音だろう。しかし、「従業員も自宅で家族と夕食を取れるように早めに閉める」という理由であれば地域住民は納得する。

 サンヨネは商品を国内外から集めているが、働く人たちの多くは地域の住民である。客の親や子どもが働いているのだ。その家庭生活を軽視した経営ではファンを獲得できるはずがない。

 小売店では定番のポイントカードもサンヨネには存在しない。ファンがいるので不要なのだ。こうした常識破りのコストカットによって利益を確保し、その半分は社員に還元される。社員のコスト意識は自然と高まるだろう。

phot 明るくて広々とした従業員休憩室。掘りごたつ式のテーブルの奥にあるのは男女別の仮眠室

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