マーケティング・シンカ論

電話営業の会話をデータ解析して判明した「デキる営業」の法則とは大事なのは根性や粘り強さじゃない?(1/2 ページ)

» 2018年11月26日 07時00分 公開
[服部良祐ITmedia]

 営業担当者の中でどんな人が好成績をたたき出すのか。職場や職種によって良しとされるスタイルはまちまちだ。ちまたにはコツをつづったビジネス書やノウハウ本が多く出ているものの、本当に客観的に信じられる「デキる営業のコツ」は何だろうと頭を悩ませている現場担当者や管理職は少なくないのでは。

電話営業の会話データをテキスト化して分析

 人材紹介サイトの運営などを手掛けるレバレジーズ(東京都渋谷区)は2018年から、転職希望者向けの営業担当の電話内容をデータ化して分析し、優秀な営業に共通する法則を見つける取り組みを始めた。背景には、勘や経験に頼りがちで後進にもノウハウを伝えにくい営業スキルを可視化して、社内で共有するという狙いがある。

photo レバレジーズは電話営業の会話を分析、「デキる営業」のコツを突き止めた(写真はイメージ。提供:ゲッティイメージズ)

 同社が分析対象に選んだのは、介護士など福祉系の仕事の転職・派遣サイト「きらケア」で営業を担当する社員数十人だ。彼らが日々の営業活動で、転職を考えている人に電話口で転職先を勧めている会話内容を記録し、分析した。比較する条件をそろえるため、入社1年以上で社内での役職や階級が同じ社員を選び、3カ月分の会話を記録した。

 18年から導入したクラウド上の通信サービス「Twilio」を活用し、営業担当者と顧客である転職希望者の音声をうまく分離した。さらにGoogleが提供するサービスを使って音声データをテキストに変換した。営業担当者の中でも転職の成約件数が多い人を「ハイパフォーマー」、低い人は「ローパフォーマー」と定義して分析を進めた。ちなみに、両者では成約件数で最大3割の差がついている。

photo レバレジーズによる電話営業の会話分析のイメージ(同社提供)

優秀な営業は「相手の体を気遣う」

 分析に耐えうる音声データのみを抽出した上で、延べ約100時間の会話内容から浮かび上がったのは、優秀な営業担当特有の「きめこまやかな顧客配慮」だった。例えば「ハイ」の営業は、「ご持病」「腰の痛み」といった、転職希望者の体を気遣った言葉を「ロー」の人より多く発していた。「今、体のどういったところが悪いですか」などと、ねぎらいの言葉を多くかけていたという。

 分析を担当したレバレジーズのデータアナリスト、阪上晃幸さんは「介護士は高齢者を持ち上げたりおむつを替えたりするなど、重労働が多く腰を痛めやすい。彼らの体を気遣える営業は成約率が高くなるのでは」とみる。

 同様に分析から分かってきたポイントが「会話の組み立て方」だ。同社の営業は1度につき約40分〜1時間の電話中に、転職希望者の属性など基本情報をまず聞き出すスタイルを採っている。しかし、ハイの営業はそのセオリーに必ずしも従わず、会話の最初に「あなたはどんな仕事をしていたのか」と転職希望者の過去の経歴を聞いている人が多かった。

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