発売当初、堀越氏はこのように予想していた。話題性の高さから「TY-AK1」が売れると思うが、落ち着いてきたらスマートフォンとBluetooth接続できる「TY-AH1」のほうが支持される、と。しかし今のところ、「TY-AK1」はコンスタントに売れ続け、「TY-AH1」よりも売れている。「ユーザーの中心は青春時代にラジカセに親しんでいた50代で、明らかにカセット目当てで購入している」という。
小売店に並べるに当たり、同社はデモテープを置き試聴できるようにした。中身は原田知世さんのヒット曲「時をかける少女」「天国にいちばん近い島」の2曲で、日本音楽著作権協会(JASRAC)の許諾も得た。
それにしても、なぜ原田知世さんの曲を選んだのだろうか? その理由を堀越氏は次のように話す。
「50代の人が青春時代を思い出すには、どうすればいいのか。現在は姿を消してしまった当時のアイドルでは難しい。その点原田知世さんは、当時のアイドルで現在も活躍しています。それにアイドルだったころ、東芝のラジカセのテレビCMに出てもらった縁がありました」
購入したユーザーからは「眠っていたカセットテープを聴くきっかけになり、昔の思い出がよみがえってきた」という好意的な声がある一方、「本格的なオーディオで聴きたいので、もっと高品質なものを」という辛口な意見もあるという。
現在の50代がシニアになっても青春時代の良い思い出を鮮明によみがえらせてくれるアイテムとして、カセットテープの音をハイレゾ相当にアップコンバートできるCDラジカセは、進化を続けて残ってもらいたいものである。
大澤裕司(おおさわ・ゆうじ)
フリーランスライター。1969年生まれ。月刊誌の編集などを経て、2005年に独立してフリーに。工場にまつわること全般、商品開発、技術開発、IT(主に基幹系システム、製造業向けITツール)、中小企業、などをテーマに、雑誌やWebサイトなどで執筆活動を行なっている。著書に『これがドクソー企業だ』(発明推進協会)のほか、ITmedia ビジネスオンラインの人気連載をまとめた『バカ売れ法則大全』(行列研究所/SBクリエイティブ)がある。
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