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続・自動車メーカーの下請けいじめ池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)

» 2018年12月03日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]
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感情論より定量的視点を

 前回の記事に書いた通り、下請けいじめかどうかは、感情論ではなくもっと定量的に判断すべきだ。大まかに言って3つのケースがある。

 過去10年の決算推移を見てみれば良い。見るべきは売上高と売り上げ総利益である。長期的に見て、売り上げが増え、利益も増えているならば増収増益であり、その場合、メーカーに対して感謝こそするべきであれ、恨むのは筋違いだ。

 注文数量が増え、売り上げは増えているにもかかわらず、値引き要求が強くて継続的に売り上げ総利益が減っているケースは、需要のある製品を限界を超えて安く買い叩かれているか、もしくは今後限界を超える可能性が高い。こうなると搾取の構造である。こういうケースであれば、まずは価格低減圧力と戦うべきである。それでダメなら別の売り込み先を早急に確保する必要があるだろう。

 そして、売り上げ高と売り上げ総利益がともにダウンしているとしたら、それはすでにメーカーから必要とされていない。他のサプライヤーにシェアが奪われている状態だ。このケースでは他の売り込み先を見つけることも容易ではないだろう。可能な限り早く転職先を探して、離脱すべきだと思う。

結論

 恐らく下請けいじめという言葉に、大きな反応が出るのは、昨今問題にされているパワハラの構造を思い出させるからだろう。「強者が弱者に要求する」と言う構造そのものが忌避感を持ってみられているのだと思う。

 しかし、強者の要求が常に間違っているわけではないのは自明である。だからこそ定量的な見方を進め、もっと冷静に判断すべきだ。

 そもそも自動車メーカーは多くのサプライヤーの貢献で成り立っている。サプライヤーなくして経営は成り立たない。本質的には「下請けなんてつぶれても良い」と考えるインセンティブは働かない。共存共栄の関係なのだ。

 その構造が理解できず、何でもかんでも下請けいじめと理解していては日本経済の未来が危ないと思う。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。

 →メールマガジン「モータージャーナル」


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