AKB48は人生のすべてだと言い切る岡田さんに、かつてないほどの困難が襲ったのは2015年ごろのこと。
仕事に対するプレッシャーとの闘いの日々で、次第に心身ともに押しつぶされていったのだ。けれども、それを口にすることができない。強い姿を見せなくては、とにかく頑張らなければと無理を重ねるうちに、自己嫌悪、自己否定といった悪循環に陥ってしまう。
「元々、ネガティブ思考な性格で、いろいろと考え込んでしまうのです。悩みが頭から離れませんでした」
いよいよ体調がすぐれないので医師のもとへ。診断されたのは、機能性低血糖症だった。これは、過激な食事制限、過食といった食生活の乱れやストレスなどが原因で、血糖値が急激に低下、あるいは低い状態にとどまってしまう疾患のことである。
「精神的に追い込まれていた部分もありますし、体も限界でした。病気になったときにこのグループから離れようかなと思いました。AKB48を続けるという夢を諦めかけました」
そのころの苦悩、苦闘は、ドキュメンタリー番組「AKB48裏ストーリー 岡田奈々19歳、夢の代償」(16年11月放送、TBS)で詳細に描かれている。自信がない、辞めたいという本音を吐露している。
踏ん切りがつかない中で、迎えた17年。転機が訪れる。瀬戸内エリアを拠点とするSTU48という新しいグループを兼任、そしてキャプテンに任命されたのだ。
「(さまざまな迷いがある中で)STUという新しいグループに出会い、兼任することになって自分の人生が変わりましたね。そのときに自分自身の存在をちゃんと受け入れることができたのです」
今までは自分のために頑張らなくては、という観念にとらわれすぎていたところに、自分よりも全員が後輩、しかもデビューしたてのメンバー約30人をリードする立場になったのだ。そこで初めて岡田さんは自分の存在意義を確認することができたという。
立場は人を変えると言うが、岡田さんにとって、この若いメンバーたちのためにという責任感が生まれたのである。
「私はぐいぐい引っ張っていくリーダーではなく、皆で一緒に手をつないでグループを作っていきたいと思っています」
けれども、あまり言葉には出さないが、全力投球で仕事に向き合う岡田さんの背中を見て、メンバーたちは刺激を受けているのは間違いない。
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