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官僚、弁護士、編集長――“リモートワーク3人衆”が語る「地方で働くと生産性が上がる、これだけの理由」「働き方改革×地方」(2/5 ページ)

» 2018年12月05日 08時30分 公開
[今野大一ITmedia]

リモートが難しい役所の仕事

大西: 役所の仕事というのはいまだに対面が基本になっていて、常に直接会っていないとダメという慣習がどうしてもあります。ただ、今は若い人も増えてきたので、リモートワークへの抵抗もなくなってきつつあります。

 また、民間企業と違って、役所の場合は、特に公共性の高い業務であるという特性から、極めて高い機密性が求められていて、実施に当たってはとても神経質になっているのも事実です。いずれは技術の革新によって、解決できるとは思いますが、その意味では、霞が関全体でみると民間企業よりは遅れているのかもしれません。

phot 経済産業省の大西啓仁氏

リモートワークをしてみて認識する「対面の重要さ」

――お三方ともリモートワークを実践されている方ならではの視点があり、面白かったです。一方、リモートで仕事を終えられたとしても、やっぱり対面のコミュニケーションを通してしかできないこともあると思います。会うことの重要性を認識したことはありませんか?

藤井: 私は弁護士ですが、顧客とのやりとりは全てチャットワークでやっています。面談や電話はせず、基本はチャットだけです。チャットは、まるで会話しているかのようにテンポよく話せます。だから効率的なのですが、一つだけ問題があります。

 チャットでのテキストコミュニケーションをするためには、文書の作成能力と読解力がかなり必要になるのです。最近は新井紀子先生の『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)で語られていたような、多くの子どもが教科書の内容を理解できない、つまり文章読解力がないということが問題になっています。ビジネスマンの中にも文章読解力に乏しい方が一定数いて、そういう場合にこちらの意図が伝わらなかったり、質問に対する回答が来なかったりということが発生するのです。

 そういったときはテレビ会議を使います。各社が高性能な製品を出しているので、この人とはテレビ会議の方がいいなと思ったら、テレビ会議を設定し、半対面でやりとりをするのです。逆にいうとテレビ会議をすれば、わざわざ会議室に集まって話をする必要はない場合が多いのです。この前も私がラオスにいたときに、東京の企業と大阪の企業と私の3者で打ち合わせが必要になりましたが、ラオス、東京、大阪でテレビ会議を問題なく実施することができました。

岡山: 地方に移住したことで、逆に対面でしか話せない人たちがいることに気付かされることがあります。ITリテラシーや回線などさまざまな問題はありますが、例えば農家の人の中には、取材をした後に記事をメールで添付して送るのではなく、FAXやお手紙での確認が必要な場合があります。その意味では、リモートワークを一つのきっかけにして、さまざまな人に合わせた仕事の進め方をすることの重要性にも気付けたと思います。

phot 『70seeds』編集長の岡山史興氏(右)

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