――地方の魅力を発信する力も重要だということですね。
大西: IoTやAIを使って地方の課題を解決する「IoT推進ラボ」というものがありまして、現在93の地域が入っています。常に募集をしておりますので自治体の方々にはぜひ応募してほしいと考えています。農業や町づくり、観光などさまざまな分野にわたって議論をし、切磋琢磨をしているのです。
――リモートによって生産性が上げるとそれだけ収益も上がります。一方で組織にいると、会社の制度や風土などさまざまな弊害によって働き方が変わらない現実もあります。働き方によって、どんどん生産性の差も広がっていく状況にあると思いますが、この辺りはいかがでしょうか?。
藤井: 生産性は大事ですね。特に弁護士は紙の書類に囲まれて、長時間労働も当たり前になっています。それだけ過酷な環境にありながら決して利益率は高くなく、2015年の日弁連の調査によると、所得分布は200万円以上500万円未満が一番多いほどでした。
一方、私の場合はITを活用していて、現在顧問先が70社あります。月額の平均の顧問料単価が10万円以上で、個別案件の売り上げもありますので、ざっくり計算しますと去年の売り上げは9200万円ほどですが、これは私一人で実現しております。ITを活用することで、これくらいの仕事が海外にいてもできてしまうのです。稼働時間を延ばし、業務効率を上げ、単価を上げる――。このことによって生産性向上が実現したわけです。
――大西さんは生産性向上についてはどのようにお考えでしょうか?
大西: 「生産性向上」は、確かに大切だと思います。しかし、ただ単に数字を追いかけるという意味での「生産性」にも、光と影の部分があると思います。われわれは高度成長を遂げる中で、ずっと数字を追いかけてきましたね。しかし私は、数字だけでは物事はよくならないと考えています。
例えば、私がある地域の中小企業を訪問した際、「ミスを見つけたらボーナスを上げる」という中小企業がありました。見つけたミスが大きければ大きいほど「よくやった」といってボーナスを上げる会社なのです。むろん、この会社が評価するミスとは、日頃の業務で見落としている決定的なミスという意味であり、故意にミスをするということではありませんが、最初は社員もびっくりしていて、「密告したらクビになるのではないか」と思っていたそうです。
でもそのうち会社の意図が社員に理解され浸透することによって、不安は徐々に払拭されました。それからは社員同士で競い合ってミスを見つけるようになったということです。結果、製品の不良品は減り、従業員はやる気を取り戻しました。大きなミスにつながらなくなったことで、皆のモチベーションが上がったということです。
このような企業の活動は、数字を追い掛けてばかりでは決して登場してきません。目に見える価値と同時に、目に見えない価値もあるからだと思います。私自身、現場に行って初めて分かったことですが、そういう価値観も今後、大事にしたいと思っています。
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