資産の15%を失っても、あなたは夜寝られますか?渋谷豊の投資の教室(3/4 ページ)

» 2018年12月06日 07時40分 公開
[斎藤健二ITmedia]

渋谷: このように公開しているのは、「GPIFは、このようなブレ幅というリスクをちゃんと考慮して皆さんのお金を運用してます」という証拠ともいえます。例えば、GPIFは130兆円の資産のうち、日本株を25%、米国株に25%、50%も株を持っています。そんなに株を持っていて暴落したら大丈夫? と思いますよね? 3年前に実際に暴落した時に、7.9兆円損を出したというので話題になりました。でもGPIFにとっては年間の想定したブレの範囲であり、きちんとコントロールしていますよという意味を込めて、自分たちの投資はこれくらいのリスクですよ、というのを公表しているわけです。

GPIFの資産構成割合:GPIF Webページより

 ブレること自体が悪いのではなくて、投資をした人がブレを許容できないことが問題なんです。投資を行う上ではリスクは避けることができませんが、注射器の針を見ても怖い人と怖くない人がいるように、リスクの許容度も人によって必ず違います。だから100万円の資産が5%下がることが嫌な人、受け入れられない人がリスク5%以上の投資をしてはだめなんです。俺は50%下がっても平気だよという人は、極端に言えば50%のリスク商品に投資をしてもいいのです。

 このルールを分かっていないと、長期投資をスタートした直後に暴落があって裏切られたと投資をギブアップしてしまうんです。長期間保有していれば結果的にいい成果が得られたのに、そのリスクに耐え切れずにやめてしまって、将来得るべきものを失う。残るのは損失だけ。どれくらいのブレ幅があるのか、そのリスクを知っておくことで、値動きにちゃんと向き合うことができる。そういう意味でリスクがとても重要なんです。

渋谷:  サイトウさんなら100万が50万になったらどうですか?

サイトウ: 落ち込みますね!

渋谷: そういう人は50%のリスクがある商品を買っちゃいけないわけです。私はもう慣れているので30%、50%のリスクは取れます。

サイトウ: 心の持ちようだと。

渋谷: はい。それだけのリスクをとっても、私は夜ちゃんと寝られます。でも初めて投資をする人はそれを知らないので、長期投資だから安心だと思いつつも、たまたま1年目から大きくブレて下がってしまったら、投資を止めてしまうわけです。でも原則的に経済が成長している以上は、長期間保有しておけば価値は上がるわけですからもったいないですよね。長期投資を途中で諦める人が多いのは、日本の投資リテラシーの低さだと思うので、まずはリスクを理解するのが投資の一丁目一番地です。

 投資を始める前はみんな収益があがることを期待しています。だから始めるわけです。でも、高い期待値を持っているからこそマイナスになると幻滅するじゃないですか。

 だから投資してすぐに幻滅しないように、リスクについてきちんと把握しておくことで長く投資とお付き合いできるようになります。そのためにもリスクに対する理解が必要なんです。リスクがあること自体は全く問題ありません。なぜなら人間の心がブレるように全ての物はブレますから。

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