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違反すると懲役刑や罰金刑も! 「残業時間の上限規制」の影響を弁護士に聞いた「知らなかった」では済まされない(2/6 ページ)

» 2018年12月20日 09時00分 公開
[今野大一ITmedia]

「多様で柔軟な働き方」を実現するために

(2)「多様で柔軟な働き方の実現」

 大きく3つあります。

1.フレックスタイム制の見直し

 労働契約上、労働者が労働すべき時間を定める期間のことを「清算期間」といいます。フレックスタイム制においては、「清算期間」の上限が、従来は1カ月でした。これが来年4月から、3カ月まで伸ばせるようになります。例えば、1〜3月の3カ月の中で労働時間の調整が可能となるため、子育て中の親が3月分の労働時間を短くすることで、春休み中の子どもと過ごす時間を確保しやすくなります。いわば労働者から見た場合の、「労働時間の貸し」が可能なのです。これも非常に重要な改正です。

2.テレワーク、副業・兼業の促進

 これは法律改正というよりは、政府の方針で促進しようというものです。副業・兼業については後ほど説明いたします。

3.高度プロフェッショナル制度(高プロ)の導入

 ある職種の人と労使協定を結んで、一定の労働時間を働いたと見なす制度です。対象業務は現在、労政審議会で検討されておりますが、かなり限定された職種になると見られています。特に金融関係の職種などに限定されるともいわれていて、使いにくい制度になるとの声も出ているのです。

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(3)「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」

 大きくは2つです。

1.非正規雇用労働者と正規雇用労働者との関係に「均等待遇」「均衡待遇」を義務付け

 これは同一労働同一賃金に関する規制です。短時間労働者や有期雇用労働者、派遣労働者と、正規雇用労働者との関係で、「均等待遇」「均衡待遇」が義務付けられています。ただこの規制はかなりインパクトのある規制ということもあり、来年4月からではなく20年の4月から施行されますのでご留意ください。それまでに賃金制度を含めて会社として対応しなければなりません。なお、既に労働契約法により「均衡待遇」については同様の規制が存在しますので、注意が必要です。

2.非正規雇用労働者に対する待遇に関する説明の義務付け

 同一労働同一賃金ができたので、非正規と正規の方との関係で待遇がどうなっているのかを会社側が説明する義務を負っています。従来でも労働基準法上、入社前に条件を明示しなければならないという項目は入っていました。ですが、今回は入社後も非正規の従業員から、正社員との関係で同一労働同一賃金が守られているかどうかを説明してほしいという要求があった場合、きちんと対応を説明しなければならないという新たな義務が設けられたのです。この要求もそれなりに会社にとっては負担が大きいと思われます。

 以上が法律改正の概要になります。

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