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違反すると懲役刑や罰金刑も! 「残業時間の上限規制」の影響を弁護士に聞いた「知らなかった」では済まされない(5/6 ページ)

» 2018年12月20日 09時00分 公開
[今野大一ITmedia]

副業・兼業の促進 就業規則をどうするか

(1)副業・兼業

 こちらは残業規制とは違い、規制を強化するのではなく規制を緩和する施策です。厚生労働省が作成した「モデル就業規則」に、副業・兼業を認める条項を追加しました。従来のモデル就業規則では、副業は原則禁止であり、会社が許可した場合にのみ、例外的に可能だったのです。しかしこれが、副業をすることを原則として認める方向に変わったのです。モデル就業規則67条1項は原則、副業ができるという条文です。2項は手続きをきちんと踏むこと、3項は例外的に認めない場合の詳細を規定している、といった具合に改定されました。

 ただ、現時点では原則は禁止であって、例外的に許可した場合に副業ができるという会社が非常に多いのが現状です。実は裁判所は、憲法に「職業選択の自由」があるので、原則は副業・兼業をしてもいいんですよ、という立場でした。就業規則に禁止する文言があったとしても、原則は副業も兼業もできるという立場だったんですね。ただ、会社の業務に支障が出るような場合は、副業をしてはいけませんよ、という考え方でした。

 まさにこのような裁判所の考え方を、政府も実行しているところだと思われます。皆さんの会社にも副業・兼業を禁止する文言が現状は入っていると思いますが、必ずしも文言通りの効果が得られるわけではなく、ケースバイケースとなります。

 つまり、会社の業務に全く支障が出ないような副業・兼業だった場合、副業をしたことを理由に懲戒処分にすることは認められず、就業規則が限定解釈される場合があるのだと、裁判所は判断しているのです。従って今後は、原則と例外を逆転させて就業規則を作る会社も多くはなってくると思います。大切なのは、裁判所は原則的には「副業も兼業もできる」という考え方をしているということです。

 とはいうものの、裁判所によって、就業規則が限定解釈されることもあるので、許可する場合はこのような場合に許可する、許可しない場合はどのような場合なのかということをモデル就業規則にならい、きちんと決めておく必要があります。一度、就業規則を見ていただき、原則禁止となっている場合は原則許可、例外的にこういう場合にはできないといった形に修正することをご検討いただければと思います。

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