正式な路線名となった「東急新横浜線」「相鉄新横浜線」は、「神奈川東部方面線」構想のうち「相鉄・東急直通線」のほうだ。1本の路線だけれども、途中の新横浜駅で営業主体が変わるため、相模鉄道と東急電鉄は自社の路線名を付ける必要がある。そこで、互いの路線にとって終点となる「新横浜」を路線名に掲げた。
「新横浜」。これが秀逸な理由の1つ目。この路線は本来、相模鉄道沿線と都心方面を結ぶ役割だ。しかし、路線名は新横浜を推した。これで「新横浜から東海道新幹線に乗れますよ」というアピールができた。相模鉄道にとっては、本来の都心直通客だけではなく、新横浜が便利になることで「相模鉄道沿線の全ての人にメリットがありますよ」と印象づけた。
東急電鉄にとってはどうか。東急沿線の人々にとって、相模鉄道と直通するメリットを感じる人は少ないだろう。正直なところ、相模鉄道まで行かなくても用は足りる。だが、無関心な東急沿線の人々にとって「新横浜で東海道新幹線に乗り換え」のインパクトは大きい。もう新幹線に乗るために山手線まで遠回りして品川に行かなくてもいいし、菊名で横浜線に乗り換えて、また新横浜で乗り換えてという手間も不要だ。
そして、新横浜という駅は東海道新幹線利用者にとても重要だ。東海道新幹線は午前6時が稼働開始である。東京発6時ちょうどは「のぞみ1号」、品川発6時ちょうどは「のぞみ99号」、新横浜発6時ちょうどは「ひかり493号」だ。このうち、静岡、名古屋、京都、新大阪に最も早く着く列車は「ひかり493号」だ。新横浜始発だから、東京発、品川発に比べて指定席が取りやすく、自由席も座れる。
東急田園都市線沿線で神奈川に住む人々は長津田からJR横浜線で新横浜へ、あざみ野から横浜市市営地下鉄で新横浜へ向かうだろう。東急東横線沿線と都内の沿線の人々は、相模鉄道には興味がなくても、新横浜に行く路線の誕生は歓迎するはずだ。東急沿線の人々にって相鉄沿線には観光目的地がない。実はこれが相模鉄道にとって解決すべき課題だけれども、それは別の機会にする。
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