東急・相鉄「新横浜線」 新路線のネーミングが素晴らしい理由杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/5 ページ)

» 2018年12月21日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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名前は「分かりやすさ」が至上である

 私の物事の評価軸はシンプルで「便利か」「楽しいか」の2つだけだ。便利なものは社会に必要とされる。楽しいものは社会に活気を与える。「便利で楽しい」はもう最高の組み合わせだ。鉄道は社会にとって「便利」な存在であり、近年は観光列車の登場によって「楽しい」が加わりつつある。

 駅名や鉄道路線名は「便利か」「楽しいか」で評価すると「便利」が最も大事。カッコつけたりひねったりしても、不便だと使われない。一時期、地方鉄道が話題作りのために「日本一長い駅名」を競った時期があった。ある日、その中の1つの駅で降りて周辺を歩き、通りすがりの人に「この近くの駅はなんと言いますか」と尋ねたら、「名前はややこしいらしいが、おれたちゃ“駅”としか呼ばねぇ」という返事だった。ここが無関心の始まりだ。たぶん、駅名を知らない人は鉄道を利用しない。

 「東急新横浜線」「相鉄新横浜線」という名付けによって、新路線の効果、影響範囲がパッと連想できるようになった。奇をてらわず、話題性のためだけの公募などは行わず、誰もが納得できる最適解を示した。名前は道具だから、分かりやすさが最も大事。クルマや化粧品、お菓子、おもちゃなどとは違う。今後、駅名や路線名を付ける鉄道事業者は「東急新横浜線」「相鉄新横浜線」を教訓にしてもらいたい。本当に便利か。使ってもらえるか。名前はとても大事だ。

 ところで「相鉄・JR直通線」のほう、羽沢横浜国大駅からJR東日本側の路線名はどうなるだろう。正式な路線名は東海道本線で、通称は東海道貨物支線である。おそらく運行系統の愛称が付くと思われる。さてJR東日本さん、どんな名前を付けるだろう。また公募しますか……。

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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