2018年11月、イタリアのファッションブランド「ドルチェ&ガッバーナ」が中国向けに公開した「中国人に差別的」な広告動画が大騒動になったというニュースを記憶している人も多いだろう。不買運動にまで発展している。過去にも中国人がファッションブランドに難癖をつけるケースがあったにもかかわらず、今回の動画が中国人を刺激するかもしれないという想像力が働かなかったのは痛い。
12月には、同じくイタリアのファッションブランド「プラダ」が、色が黒く唇が分厚いデザインの人形「プラダマリア」を販売したことで、黒人への侮辱だとして炎上。結局、批判を受けて、同社はすぐに謝罪して人形の販売を止めている。人形を見ると明らかに黒人が反発しそうなデザインなのに、そこに思い至らなかったことが不思議だ。
黒人を揶揄(やゆ)した話では、18年1月にも、スウェーデンのカジュアルブランド「H&M」が、黒人の少年に「ジャングルで最もクールなサル」とプリントされた服を広告で着用させていたことで大きな騒動になった。人種差別だとして、南アフリカで店舗が襲撃される事件も起きた。
さらに、18年11月、フランスのファッションブランド「ディオール」が、メキシコ文化をたたえる広告キャンペーンのモデルに米女優のジェニファー・ローレンスを起用したことで批判された。近年、米国を中心に、映画などで本来は白人ではないキャラクターを白人に演じさせる行為が「ホワイトウォッシュ」と呼ばれて問題視されているが、このディオールのケースも「メキシコ人を起用すべき」「ホワイトウォッシュだ」と指摘された。
こうした炎上は多くのケースでSNSが絡んでおり、ハッシュタグを付けられて不買運動に発展している。いわゆる消費者アクティビズム(消費者による運動)の流れに乗ってしまうのだ。
どのケースも、インターネットが今ほど普及していない時代なら、騒動はここまで大きくなっていなかったかもしれない。だが、昨今の暴言や騒動でもうはっきりしたと思うが、こうした想像力の無さに起因するポリコレ感覚の欠如は、もはや言い逃れはできない時代になっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング