18年末、忘年会シーズン真っただ中に、知人から都内の地下鉄でひどい目にあったと聞いた。隣に座って寝ていた若い女性が、手にペットボトルの水を持っていた。するとペットボトルのキャップが緩かったようで、その女性がガクンとなった際に水が飛び散り、知人のカバンもコートもびしょぬれになってしまったという。
女性は「すいません」と謝っていたというが、そもそも公共交通機関で飲み物を持っていれば、揺れなどで他人の服や持ち物、設備を汚し、トラブルになりかねないということが想像できていない。飲み物禁止、という場所があるのは、こうしたトラブルを避ける意味もある。
これは、マナーうんぬんという話ではない。時々、店でテイクアウトしたカップのコーヒーなど、飲み物を手にしながら電車やバスに乗り込んでくる“おしゃれ”な人を見かけることがあるが、それが他人にかかればどうなるのかを想像すべきである。手が滑って床にでもぶちまけたら、どうするのか。
逆を言えば、想像力を働かせれば、こうした無用なトラブルは回避できる。ちょっと頭の中で想像するだけのことなのだが……。
冒頭で触れた平沢議員や麻生副総理といった古参の政治家らも、ちょっと考えればいいのに、と思うのだが、彼らのような政治家による暴言はこれからもきっと続くだろう。ただ暴言を発するたびに、変化し続ける社会の流れを実感していないという無知さを有権者にさらすだけだと認識すべきだ。あまりにも世間を知らないために、想像力で発言の影響をシミュレーションすることすらできないのかもしれないが。
間もなく平成という一時代が終わろうとしている日本。そろそろ政治の世界などにも、現代社会を理解するまともな想像力を持った、新しい時代にふさわしい人たちが1人でも増えることを願う。
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
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