なぜLGBT後進国ではダメなのか 「国つぶれる」発言を覆す“伝説のスピーチ”河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/5 ページ)

» 2019年01月11日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

「なぜ反対する人がいるのか分かりません」

 スピーカーは、ニュージーランド国民党で14年まで議員を務めたモーリス・ウィリアムソン氏。13年4月にニュージーランドの首都ウェリントンの議会での「婚姻平等法案」の最終審議と採決の際に行ったものです。

この法案が採決されても、太陽は明日も昇ります。あなたの住宅ローンは増えたりしません。皮膚病にかかったり、布団の中にヒキガエルが現れたりもしません。だから、この法案で大騒ぎするのは止めましょう。この法案が通ることは、影響がある人にとっては素晴らしいものです。でも、そうでない人にとって人生は何も変わりません。

今、私たちがやろうとしていることは「愛し合う2人に結婚を認めよう」としているだけです。ただそれだけです。外国に核戦争を仕掛けているわけではありません。農業を壊滅させるウイルスをばらまこうとしているわけでもありません。

私たちの「愛し合うカップルを結婚させてあげる」という法案の何が間違っているのか分かりません。もちろん自分とは違う人を好きになれないのは分かります。それは構いません。でも、なぜ反対する人がいるのか分かりません。

 ウィリアムソン氏のスピーチは、反対票を投じた政治家や、左派的なコメンテーターからも称賛され、世界中で話題になりました。

 来年、2020年には、東京オリンピックが開幕します。18年の平昌オリンピックでは、フリースタイルスキー男子スロープスタイルに出場した、米国のガス・ケンワージー選手が交際相手の男性とキスする様子がテレビ中継で放映され、「ホモフォビア(同性愛者嫌悪)をなくす、バリアを壊すなど、偏見を変えるたった1つの方法は、実際に見てもらうことだと思う。これは僕が子どもの頃には間違いなくなかったこと」と、子どもの頃に自身が苦しんだ経験を打ち明け、その喜びを表現しました。

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