カルロス・ゴーンは現代の立花萬平か 日本が「人質司法」を止められない事情スピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2019年01月15日 08時04分 公開
[窪田順生ITmedia]

事実はドラマよりもエグい

 立花萬平のモデルは、日清食品創業者で「チキンラーメン」の生みの親である安藤百福氏。ご存じの方も多いと思うが、安藤氏は台湾人で、福子のモデルである妻・仁子さん以外に台湾にも妻がいた。こういう事実はどういうわけか朝ドラでは見事にスルーされているのだが、萬平・福子夫妻に起きるエピソードは基本的に「史実」をベースとしている。もちろん、先の「国策捜査」も然りである。

 ただ、事実は小説より奇なりではないが、事実はドラマよりもかなりエグい。

 『戦後、台湾出身者は日本は中華民国か、どちらかの国籍を選択しなければならなかった。後に日本国籍を取得するものの、その時の安藤氏は中華民国を選んだ。この選択によって、当時の日本人が持っていた戦時所得を再分配するための「財産税」の対象からはずれ、新たな事業への足がかりを手にした。しかし、豊かな資産を使った氏の事業は発足したばかりの国税庁の目にとまり、脱税容疑で収監されてしまう。氏は「いけにえにされた」と怒りを隠さなかった』(日本経済新聞 2007年1月6日)

 安藤氏はあくまで合法的に事業を展開していただけなのに、他の外国籍経営者たちに対する「見せしめ」として、私腹を肥やしているという疑いをかけられたのだ。

 そう聞けば、誰かの姿と重なって見えないか。そう、不正と欲にマミられた外国人経営者のそしりを受けているゴーン氏だ。

 勾留理由の開示を東京地裁に請求して法廷にあらわれたゴーン氏も「合法」を強調し、「根拠のない告発によって不当に非難され、不当に拘束された」と強く主張している。

 経済ジャーナリストの伊藤博敏氏が『現代ビジネス』で書いているように、ゴーン氏によるルノー・日産統合を阻止するための「国策捜査の生贄」(2018年11月22日)となったという見方があることは今さら説明の必要がないが、安藤氏もそれと非常によく似たパターンで逮捕されているのだ。

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