なぜ「スガキヤ」は中京圏で繁栄した? 「だし」の哲学と強固なビジネスモデル長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/5 ページ)

» 2019年03月19日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

 中京・東海地方のソウルフードとまで言われる超有名店が「スガキヤ」である。東は静岡県から西は兵庫県まで2府9県のエリアに、337店を展開(2019年3月11日時点)。

 特に、地元愛知県には半数以上の184店が集中している。岐阜県に43店、三重県に38店となっており、この3県で全体の約8割を占めている。

 経営するスガキコシステムズ(名古屋市)の年商は、約116億円(18年3月末現在)。創業して70年を超える老舗の外食チェーンだ。

 主にショッピングセンターやスーパーのテナント、フードコートに出店しており、小さい子どもを連れた家族からお年寄りまで、あらゆる年代のお客に愛されている。

 平日の夕刻には、中学生や高校生が学校帰りに立ち寄って、ラーメンやソフトクリームを食べていく光景も日常となっていて、はじめて自分のお小遣いで外食した店がスガキヤだったという人も多い。

 今回は、スガキヤが圧倒的に支持される理由に迫ってみたい。

photo 中京圏で愛されるスガキヤ

創業は「甘党の店」

 スガキヤの創業は1946年(昭和21年)。名古屋市中心部の栄に、「甘党の店」をオープンした。当初は、ぜんざいやまんじゅうを販売する甘味処の店として、女性に人気だった。

 ところが、ラーメンを食べてから立ち寄る人が多く、いっそラーメンも提供してほしいという要望により、48年にはメニューにラーメンが加わったという。店名も「寿がきや」と改めている。屋号は創業者で先代社長・菅木周一氏の名字である「菅木」からきている。

 今も昔も、スガキヤのメニューはラーメンとソフトクリームが2枚看板だ。右手にラーメン、左手にソフトクリームを持つマスコットキャラクター「スーちゃん」のビジュアルが、まさに店の性格を的確に表している。

 ちなみにスーちゃんのデザインは、1958年に新聞広告の公募により決まった。発案者は当時名古屋市在住の銀行マンだったそうだ。

 全国的にもラーメンと甘味を売りにする店は非常に珍しい。普通はラーメンとセットで提供されるギョーザも売らない(系列の別業態ではギョーザを売るケースもある)。

 スガキヤの通は、ラーメンとソフトクリームを一緒に頼んで、交互に食べるという説もある。それほどラーメンとソフトクリームの食べ合わせに違和感が少ない。

 全国的にみると、飲んだ後のシメや風呂屋帰りの夜食に啜る、屋台から生まれたご当地ラーメンが圧倒的に主流派なのに対して、甘味から発想したおやつ感覚のラーメンという点がスガキヤのユニークさなのである。

photo マスコットキャラクター「スーちゃん」
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