「10連休」が日本のためにならない、やっぱりの理由スピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2019年05月07日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

自分たちが受け取るべき「代価」を放棄

 本来、労働者の正当な権利であるはずの有給休暇を取らないことは、自分たちが受け取るべき「代価」を放棄しているということでもある。それがどれくらいの金になるのかを、第一生命経済研究所が試算している。

 『2017年の正社員の有給休暇未消化分が給与額に換算して総額どの程度になるのかを試算したところ4兆円相当になることが分かった。正社員1人当たりでは 13万5千円程の有給休暇を取得できていない。過去10年近く有給取得率が5割前後で推移し、所定内給与が17年の試算に用いた数値と大差ないことなどを考えると毎年4兆円近くの有給が消滅してきたことになる』(マクロ経済分析レポート 2019年2月25日)

 この「失われた4兆円」を労働者に正しく還元すれば、実質的には賃上げを行なったことと同じなので、生産性も上がっていく。そこで、有給休暇をどうにか消化させようと、さまざまな取り組みが行われているわけだが、先ほど紹介したデータからも分かるように、まったく効果が出ていない。なぜかというと、有給を取れ取れと叫びながら、それを阻む「連休」を国が増やしているからだ。

10連休によって、生産性が低下しているはず……(写真提供:ゲッティイメージズ)

 大企業ならば、人事や総務が目を光らせて取得率100%を目指すなんてこともできるが、中小では人手不足だ、みんなの迷惑を考えろという無言の圧力をかけられ難しい。

 そこにダメ押しをかけているのが、「連休」だ。ここでたっぷり休めるんだから、そこに加えて有給休暇なんて休みすぎだろ、というようなムードが日本の労働現場を覆ってしまっているのだ。

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