時間節約に役立つツールや手法があふれかえる現代においても、時間に追われ、人生の意義を見失う人も少なくない。そうした中、「バレットジャーナル」と呼ばれる箇条書きを使ったノート術に注目が集まっている。発案者であるライダー・キャロル氏は、発達障害を抱えながら、自らの思考を整理するためにバレットジャーナルを生み出したという。なぜバレットジャーナルは世界の人々に受け入れられているのか。来日したライダー氏に話を聞いた。
――キャロルさんが開発されたバレットジャーナルは、箇条書きを使ったメモから、思考や情報、タスク、目標などを主体的に整理できるノート術とのことですが、どのような経緯で生まれたものなのでしょうか。
まず、私の人生を大きく変えた出来事からお話させてください。私は幼少期からADD(注意欠陥多動性障害)の問題を抱えていたこともあり、「どうすれば自らの目標を達成できるか」ということをずっと考えていました。
そのおかげで、デジタルプロダクトのデザイン会社でアシスタントからキャリアをスタートさせた私は、順調に昇進を重ねたんです。しかも、それだけでは飽き足りず仲間と二人で会社を立ち上げました。
日中はフルタイムで仕事をして、夜や週末の時間を使って自分たちの会社のビジネスを進める。そんな生活が約2年半続きました。「ビジネスが成功すれば幸福になれる」と信じ、時間だけでなく、お金や人間関係さえも犠牲にした結果、ビジネスで稼げるまでになりました。つまり思い描いた通りに成功したのです。
――2年半の努力が実ったわけですね。
ところが……。今でも、あの日のことは覚えています。私がコーディングをしたWebサイトから注文した商品が自宅に届きました。もちろん、私がデザインした商品です。
でも、私はその商品を手に取ったとき、「全ては無意味だった」という感覚にとらわれたんです。あの時は混乱しましたね。自らの生産性を上げ、描いた目標を達成したにもかかわらず、まったく意味を見出だせなかったわけですから。
あの日から、私は「成功」や「幸福」の意味について考えるようになったんです。そして、答えを知るために、「あなたにとっての幸福や成功は何か」と友人に聞いてまわりました。
友人の反応は大きく分けると2パターンでした。混乱した表情を浮かべながら何も答えられないというパターン。そして、「お金持ちになりたい」「家族がほしい」「休暇がほしい」といったありきたりな答えを出すパターンです。後者の人たちには、さらに「あなたはなぜそれを望むの?」と聞きましたが、この質問に対しては誰も満足に答えることができませんでした。
――なぜ、人々は自分の望みについて明確な答えを持っていないのでしょうか?
私自身もそうでしたが、普通に生活をしていると、自分自身を深掘りして問いかける機会がありません。多くの場合、人々は何らかの目標を掲げ、何かを犠牲にして日常的に努力をしていますよね。ところが、その目標は自分が心から望むものではないということがほとんどなのです。
友人や親からの期待、あるいは文化的な背景、SNSやニュースなどからの影響――。いずれにしても、外から与えられた目標でしかない。自らが求めているものを知らなければ、それを手に入れることはできません。自分の行動について本当の意義を理解せずに生産性を高めたところで、それは無意味ですよね。
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