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Slackは自社で「Slack」をどう活用しているのか 米Slackの人事担当責任者に聞いた業務を効率化するITツールの最新事情(1/2 ページ)

» 2019年10月04日 07時00分 公開

 先日、9月17日に東京都内でSlackのパートナーイベント「Frontiers Tour Tokyo」が開催された。FrontiersはSlack本社のある米カリフォルニア州サンフランシスコで毎年4月に開催されているイベントだが、開催拠点を米国外へと拡大しつつあり、今回のFrontiers Tour Tokyoは日本かつアジアでは初の開催となる。

 2017年11月のSlack Japan設立から1年半が経過し、Slackソフトウェアの連携先となるアプリケーションのエコシステムや導入事例は日増しに拡大しつつある。もともと日本法人設立以前より、米国内外で急速に活用が進んだSlackを研究して先行導入するユーザーは少なくなかったが、拠点を正式に設立し、ユーザーへの導入やパートナー支援体制を強化したことで、導入に弾みがついたという流れだ。

Slackの主に日本のユーザーを対象にしたエコシステムの拡大。連携サービス対応パートナーは増え続けている
Frontiers Tour Tokyoで紹介されたSlackの国内導入事例の一部

 数々のユーザー事例も興味深いのだが、今回着目したのはむしろSlack自身の話だ。日本オフィスを見るだけでも、わずか1年半程度で従業員は一気に5倍に膨れあがっており、スペース的に余裕のある新オフィス移転後はさらに採用活動が活発化しているという。

 オフィスを数カ月ぶりに訪問してみると、知らない顔がいつの間にか一気に増えているということも珍しくない。こうした新しい従業員の業務支援にも、もちろんSlackが活用されており、増え続ける従業員とのコミュニケーションになくてはならないものとなっている。

Slack Japanカントリーマネジャーの佐々木聖治氏。法人設立からわずか1年半程度だが、従業員規模は当初の5倍になり、今春の新オフィス移転後はさらに採用を拡大しているという

 今回、こうした“Slack内”でのSlack活用について、米Slackの人事担当シニアバイスプレジデントであるRobby Kwok氏に話を聞く機会を得た。同氏はYahoo!やLinkedInで事業戦略や経営企画を担当し、前職となるTwitterではもともと在籍していたTellApartの事業運営を引き継ぐ形で同社に参画。Slackに参加したのは3年半前で、当時はまだ400人程度の従業員で全世界3拠点しかなかった会社が、現在では1800人規模の12拠点と4倍以上に拡大している。この急拡大しつつある組織で、どのようにSlackは利用されているのだろうか。

Slack新入社員に行われる本社オリエンテーションの内容とは

 前述のように世界規模で急拡大しつつあるSlackだが、実際には従業員の多くは米国ベースだ。一方で、拠点を持つ欧州やアジアでの従業員が増えつつあり、こうした世界拠点をまとめるべくリージョン担当のリーダーを採用している。

 日本でいうと佐々木氏がそれに該当するが、選定の基準は「Slackの文化をきちんと理解していること」とKwok氏は説明する。Kwok氏のSlack内での役割は主に4つあり、1つはこうしたリーダーを含む採用活動、2つ目は人材管理、3つ目は福利厚生、そして4つ目に教育や関連プログラム開発がある。

 ここはSlackらしいところなのだが、今回同氏が来日する際にも、事前に世界の複数拠点間での打ち合わせがSlack上で行われており、必要な情報の共有や訪問先で会う人物の情報などをあらかじめ理解した上で出張後の業務に備えている。

 その一方で、人材開発における対人コミュニケーションの重要性も認めており、例えば新たに従業員となった人々は全ていったんサンフランシスコのSlack本社へと集められ、そこで3日間のオリエンテーションを受ける必要がある。

 こう聞くと、日本の大企業でもよくあるような新人研修の合宿オリエンテーションのようなものを想像するかもしれない。だが、実際には3日間のカリキュラムの中で、時間の多くは「Slackのツールとしての使い方」の説明や実践に費やされ、このうちの残りの時間をSlackカルチャーの理解や、Slackのエグゼクティブらを含む本社メンバーとの交流会に割り当てられる。

 「Slack(という会社)を知るには、まずSlack(というツール)を知れ」というのはなかなかに面白い。時間と場所を選ばないSlackというツールながら、わざわざ1カ所に人を集めて毎週のように新人研修を行っているというのも興味深い。

研修の中で説明されるSlackの6つのコアバリュー
同じくSlackカルチャーの説明として紹介される「Slackらしさ」とはの解説

 オリエンテーションの中で行われるSlackの使い方では、Slackに慣れ、そのカルチャーを学習するだけでなく、より重要な部分に「複数の異なるチャンネルに参加する」というトピックがある。とっかかりの部分ではあるが、単純に業務に直接関係するチャンネルだけでなく、自身が興味のあるチャンネルに参加してみるということがポイントだ。

 例えば、Kwok氏自身、社内で多くのチャンネルに参加しているが、その中の1つに同氏の大好きなバスケットボールがある。同好の士と共通の趣味について話すなかで、参加者がどのチームを好きで、どの選手が好きかを理解している。実際に会う段階に至って、別々の拠点にいながらもすでに共通の話題を持ち、相手のことを深く理解した上で話がスムーズに進むという流れだ。先ほどの来日前のミーティングや事前の情報共有に近い考え方だが、趣味を通じて相手の特性を理解するのもSlackの使い方の1つだ。

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