ソフトバンク、楽天、DeNA ……IT企業とスポーツビジネス  “三社三様”の関わり方新連載 池田純のBizスポーツ(1/3 ページ)

» 2020年01月16日 06時00分 公開
[池田純ITmedia]
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新連載:池田純のBizスポーツ

 「巨人、大鵬、卵焼き」が流行語となったスター選手ありきの昭和の時代から大きくスポーツを巡る環境は変わり、令和のスポーツには「ビジネス」の視点が不可欠となった。横浜DeNAベイスターズの初代球団社長で、現在はスポーツによる地域活性化などに取り組む一般社団法人さいたまスポーツコミッションの会長を務める池田純氏が、スポーツビジネスの裏側に迫る新連載。第1回は「IT業界とスポーツビジネス」をテーマに、ソフトバンク、楽天、ディー・エヌ・エー(DeNA)とプロ野球に参入したIT企業の“三者三様”ならぬ“三社三様”の取り組みに迫る。

 かつてDeNAの執行役員、ベイスターズの球団社長を務めてきた私が今、興味深く見ているのが、プロ野球に参入したIT企業がそれぞれ異なる道を歩んでいる事実です。メルカリ、ミクシィ、アカツキなど新興のIT企業がスポーツに進出を始める中、「IT業界とスポーツビジネス」の関係性を解き明かしていく上で、まずその先駆けとなったソフトバンク、楽天、そしてDeNAの現在を世の中に出ている客観的な情報から分析したいと思います。

 日本のプロ野球は、企業がオーナーとして運営するという独特な運営形態を取り、これまで鉄道会社や新聞社など、その時代の有力企業が保有してきました。これは、親会社から球団への「赤字補填」が広告宣伝費として認められるという、1954年の国税庁の通達が後押しとなり、広告宣伝を軸に、本業との相乗効果、ブランド価値向上を図る狙いで、その形が続いてきたのです。

 その中で近年、存在感を増しているのがIT業界です。球界再編に揺れた2004年、11月にソフトバンクが福岡ダイエーホークスを総額200億円で買収し、楽天は東北楽天ゴールデンイーグルスを設立してプロ野球に参入。11年12月には、DeNAが東京放送ホールディングス(TBSHD)から約65億円で株式を取得し、プロ野球界に進出しました。

 当時、DeNAが注力していたのはゲーム事業でした。「ngmoco(エヌジーモコ)」という米国のゲーム会社を最大約4億ドル(当時342億円)で買収し、海外でのゲーム事業に挑戦していた時期。ベイスターズについては、あくまで会社の認知と社会的ステータスを上げるくらいの話で見ていた人が社内にも多かったように思います。だからこそ、立候補して35歳というプロ野球史上最年少で球団社長に就任した私が、「野放し」といえる状態で意思決定権を与えられ、思うように経営を進められました。

 DeNAが経営に参画する前年度のベイスターズは、単体の売上高が約52億円、赤字が約24億円という状況でした。それを、球団社長在任中の5年間で売上高110億円超、10億円超の黒字を計上するまでに改革することができました。2016年には横浜スタジアムの運営会社の友好的TOB(株式公開買付)にも成功。不可能と言われた球団と球場の一体経営を実現したことで、ベイスターズは常時営業利益10〜30億円以上をたたき出せる体質の「優良企業」へと変貌を遂げました。

「万年最下位」だったベイスターズは黒字化 ハマスタには連日多くのファンが駆け付ける(画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ)
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