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橋下徹が語る新時代の働き方「自分の価値を高め続けられない人は“淘汰”される」橋下徹“異端”の仕事術【7】(1/5 ページ)

» 2020年02月23日 04時00分 公開
[橋下徹ITmedia]
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 元大阪府知事・元大阪市長、橋下徹――。彼の名前を聞くと、「政治の世界で仕事をしてきた人間」という印象が強いかもしれない。だが、もともと橋下は有能な弁護士だった。橋下自身も、政治家として力を発揮してきた土台には「民間の世界で身につけてきた仕事の基本がある」と語っている。

 弁護士であるにもかかわらずスーツを着ず、茶髪、Gパン、革ジャンといった個性的な出でたちでマスメディアに出演し、その後は政治家として巨大な役所組織を率いるリーダーとなった。政治家として時には周囲と激しく衝突し、「異端視」されながらも行政改革に奮闘したことは誰もが認めるところだろう。

 行政改革とは、言い換えれば「組織改革」だ。大阪府庁、大阪市庁という組織を変革し、それまで停滞の一途をたどっていた大阪を、圧倒的な実行力で立て直してきた。「適正な組織づくり」という点においては、公的組織と民間組織の間で大きな違いはない。どちらも、組織の意欲や機能性を高め、その組織の使命を実行し、世の中の役に立てていく。つまり、「定めた目標・戦略を実行するために適正な組織をつくる」点では変わらない。  

 この連載では新著『異端のすすめ 強みを武器にする生き方』(SB新書)の中から巨大組織を率いたリーダー、橋下徹の仕事や働き方についての考え方をお届けしていく。第7回目は、これからの時代の働き方について、橋下に持論を語ってもらった。

phot 橋下徹(はしもと・とおる)1969年東京都生まれ。大阪府立北野高等学校、早稲田大学政治経済学部卒業。98年、橋下綜合法律事務所を開設。2003年「行列のできる法律相談所」にレギュラー出演開始。08年、38歳で大阪府知事、11年に大阪市長に就任。実現不可能と言われた大阪都構想住民投票の実施や、行政組織・財政改革などを行う。15年、大阪市長を任期満了で退任。現在はTV番組出演や講演、執筆活動など、多方面で活動している

強みの掛け算で「自分にしかない価値」を手にする

 現代は、組織に属していても「個人の価値」が問われる時代です。こういうと、個人の価値は仕事の大きさによって決まると思う人が多いかもしれませんが、僕の人生経験からすると、仕事の大きさなんていうものはたいしたことじゃない。それよりもはるかに重要なのは、「自分にしかない価値」を持つことです。

 つまり「自分にしかできないこと」なのか、「誰にでもできること」なのか。たとえ大きな仕事をしていても、誰にでもできることだったら、それは自分の価値が上がることではないということです。組織に属していてもいなくても、個人の価値はシビアに評価されると心得てください。

 画一的な横並びがよしとされるのではなく、個々人の持ち味、強みがその人の価値として重視されるという意味では、今はいい時代になったといえるでしょう。その反面、自分の価値を高めることができなければ、あっという間に淘汰されかねないという、恐ろしい時代でもあります。

 一番たしかな個人の価値とは、他人よりも突き抜けているということ。何か特定の分野においてズバ抜けた才能があれば、話は早い。でも、悲しいかな誰もがそういう才能を持つことができるわけではありません。

 野球を志す人が、全てイチロー選手のようになれるわけではないし、研究に従事する人が全て、ノーベル賞を受賞した京都大学の山中伸弥さんのようになれるわけではない。フィギュアスケートを死ぬほど練習しても、羽生結弦選手のようなスターは何十年に一度しか生まれないし、お笑いのセンスがあっても、あの島田紳助さんを唸(うな)らせたダウンタウンさんのようにはなれません。 

 残酷な事実ですが、努力ではどうにもならない場合も多いのです。ではどうするか。僕から一つアドバイスできるのは、それは「複数の強み」を「掛け算」すること。自分が持つカードを増やすということです。

 ひとつひとつは、そこまで突き抜けていなくても構いません。「何も努力していない人よりは格段に抜けているけど、誰も到達していないレベルというわけではなく、同じくらい突き抜けている人は結構いる」くらいの強みを「複数」持てばいいのです。

 それでは単なる「器用貧乏」で、個人の価値にはならないんじゃないかと思われそうですが、「数」の力は侮れません。ひとつひとつの強みは、他にも同じくらいのものを持っている人が結構いたとしても、複数の強みを掛け合わせることで「自分にしかない突き抜けた価値」になるのです。

phot フィギュアスケートをいくら練習しても、羽生結弦選手のようなスターは何十年に一度しか生まれない(写真提供:ロイター)
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