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「6年で売り上げ5倍」「売上高過去最高の54億円」 プロ経営者・メイ社長が明かす新日本プロレス躍進の秘密セルリアンブルーのプロ経営者【前編】(1/4 ページ)

» 2020年03月17日 05時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]
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 新日本プロレスが絶好調だ。2018年度の売上高は過去最高の54億円。19年には米国ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで1万6000人を動員し、20年1月4日・5日には史上初の東京ドーム2日間も成功させ、合計7万人以上が会場に詰めかけた。

 1972年創業の新日本プロレスは、70年代から80年代にはテレビのゴールデンタイムで放送され、97年には39億円の売上高を誇った。しかし、2000年代に入って低迷し、05年に最大損失を出して経営譲渡された。11年度には売上高は11億円まで落ち込んでいたが、12年にカードゲームなどを手掛けるブシロードが買収したことによってV字回復。買収後6年で売り上げ5倍を達成している。

 さらなる成長を目指して、18年にはハロルド・ジョージ・メイ氏が社長に就任。メイ社長は、サンスターの執行役員、日本コカ・コーラの副社長を経て、タカラトミーでは社長として業績をV字回復させた「プロ経営者」だ。就任後、海外進出などで新たな戦略を打ち出しているメイ社長に、今後の新日本プロレスの戦略や、プロ経営者から見た日本企業の課題を前後編の2回にわたってお届けする。メイ社長は流ちょうな日本語を話し、インタビューに応じてくれた。

 前編では、新日本プロレスの躍進の秘密に迫る。

photo ハロルド・ジョージ・メイ 新日本プロレスリング社長兼CEO。1963年オランダ生まれ。8歳から13歳まで父親の仕事の関係で横浜で生活する。その後、インドネシアへ移り、大学からはアメリカへ。ニューヨーク大学修士課程修了。ハイネケン、日本リーバ(現ユニリーバ・ジャパン)、サンスター、日本コカ・コーラ副社長、タカラトミー代表取締役社長を経て現職。アース製薬社外取締役。著書に『百戦錬磨 セルリアンブルーのプロ経営者』(時事通信社)

8歳からプロレスファンだった

――メイ社長は、15年に当時赤字状態だったタカラトミーの社長兼CEOに就任し、わずか数年で大幅黒字を実現してV字回復をさせた「プロ経営者」です。新日本プロレスは社長に就任した当時は売り上げが39億円と、タカラトミーの1600億円の40分の1にも満たない会社でした。なぜ社長を引き受けたのでしょうか。

 もともと私はプロレスファンでした。父の仕事の関係で、初めて日本に来たのは8歳のときでした。家族も私も日本語が話せなかったので、テレビでニュースや映画を見ても、まったく分からなかったのです。ところが、唯一テレビで見て理解できたのがプロレスでした。

 プロレスはいい意味でルールが単純明快で迫力があります。映像の素晴らしさだけで十分魅力を感じました。しかも、当時父は40代でしたが、父も私もプロレスを見て楽しめました。これは父とのいい思い出です。世代を超えて楽しめるのがプロレスの魅力だと思います。

 プロレス好きが高じてタカラトミー時代には、年に1回全社員を集めて開催する全社方針発表会で、プロレスの入場曲をかけてスポットライトを浴びながら入場していました(笑)。プロレス風の演出です。社長が派手なパフォーマンスをすると、熱意が伝わります。熱意が伝われば、真剣に話を聞いてくれると信じていました。

 そんなことをしていると、私がプロレス好きだといううわさがブシロード創業者で、新日本プロレスのオーナーである木谷高明さんの耳に入り、一緒に食事をするようになったのです。

――新日本プロレスの社長就任は、木谷オーナーから直接打診されたのですか。

 私がタカラトミーの社長を退任することがニュースで流れると、すぐ携帯に電話が入り、社長就任を要請されました。ただ、引き受けるかどうかは、正直なところとても悩みましたね。プロレスが好きなだけに、外から見て新日本プロレスの経営の難しさや課題も感じていましたし、好きなものを仕事にするのは苦しいのではないかとも思いました。思い入れが強いだけに、衝突することもたくさんあると予想できたからです。

 それでも引き受けたのは、やはりプロレスが好きだったことと、自分の経験やスキルを使ってプロレスを助けたいと思ったことからです。上から目線ではなく、少しでも手助けをしたいと思い、引き受けました。

photo 鳥山明の漫画『ドラゴンボール』のピッコロのコスプレをするメイ社長
photo 2020年1月4日・5日には史上初の東京ドーム2日間も成功させ、合計7万人以上が会場に詰めかけた
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