世界一規律正しい日本人が、「外出自粛」の呼びかけを無視するワケスピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2020年04月07日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

人々の行動に影響

 さて、ではこのような論調・映像が朝から晩まで何日間も連続で大量に流されると、人々の行動にどんな影響が出てくるのか。

 「そりゃあ報道のおかげで危機意識が高まって、外出を控えるようになるんじゃない?」と思うかもしれないが、現実はむしろその逆で、このように考える人たちが増えていく。

 「なんだ、週末は外出自粛とか言ってただけど、たくさんの人が出かけてるじゃん。だったらウチも本格的にロックダウンとかなる前に、出かけられるうちに出かけておこう」

 つまり、テレビや新聞で「外出自粛に従わない人」を繰り返し、繰り返し報道することによって、皮肉なことに「外出自粛に従わない人」の背中を押してしまっているのだ。

 と言うと、「世の中の人間をバカにするな! そんなに簡単にマスコミに踊らされるわけがないだろ!」と怒る方たちがたくさんいるが、我々がマリオネットのようにいとも簡単に操られてしまうのは、先日の「トイレットペーパーパニック」が証明している(参照記事)。

 SNSで「トイレットペーパーは中国で製造しているので品切れになる」というデマが流れた。テレビや新聞は、これは悪質なデマで、日本国内で製造しているので在庫はたくさんあるというメーカーの説明を報道して、不要な買い占めはやめてくださいと訴えた。しかし、そこでこのようなパニック時に絶対にやってはいけないことをした。

 「空になった棚」と「デマだと分かっていても、なくなったら困ると店に押しかけた人々の行列」というパニック映像を繰り返し流したのだ。こういう映像が目に入っても、「必要な人に行き届かないし、店や流通が大変になるから今は買うのはやめよう」と冷静に考えられる人は少ない。ほとんどは、「みんな」に引っ張られる。

 「うわっ、みんなあんなに並んでいるんじゃんか。こりゃなくなったら大変だ。家族や親戚にも分けてあげられるように大量に買いしめなくちゃ、あとでバカを見るぞ」

 つまり、マスコミが警鐘を鳴らそうと「禁止行為」を取り上げることで、「禁止行為」に踏み切っている人間が世の中にはわりと多いんだな、という誤解を人々に与えて、「禁止行為」の心のハードルを下げてしまったというわけだ。

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