クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

新燃費規程 WLTCがドライバビリティを左右する池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)

» 2020年10月12日 07時01分 公開
[池田直渡ITmedia]

 ここ最近よく聞かれるのが、「最近の新型車ってどうしてアイドルストップ機構が付いてないの?」という質問だ。全部が全部装備しなくなったわけではないが、一時のように当たり前に装備している状況でなくなったのは確かだ。

 それに対してはこう答えている。「燃費の基準になる測定方法が変わったから」

高燃費をたたき出すヤリスのガソリンモデルにはアイドリングストップ機能が付かない。当然ヤリスクロスも同様

JC08からWLTCへ

 現在、日本国内での燃費表示は、従来の国土交通省が定めたJC08から、国際基準のWLTCへとシフトしつつある。正確にいえば、新型車はすでに移行済みで、継続生産車は今年の9月1日までに規制が義務化されていたが、コロナの影響で、4カ月延期され、いまだに移行措置の最中ということになる。

 その中身がどう変わったかといえば、JC08で想定していた運転パターンでは、渋滞に巻き込まれて車両が停止しているか、走り始めてからは比較的負荷の低い加減速で速度が上下しているという想定時間が長かったのに対し、WLTCモードでは運転中の燃料消費におけるアイドリングの比率がダウンし、むしろ新たに加わった高加速領域や高速運転域での燃料消費の方が結果に対して支配的になった。

 それは下のグラフの急峻な加速の傾きを比べると分かるだろう。モードの測定時間が伸びて横軸の目盛りが変わっている影響もあるが、それでも加速時の初速と終速のギャップとそれに要する時間は短くなっている。なお国内のWLTCでは、Ex-Highは除外されている。

 この高加速度というのは、例えばBセグメントあたりだと全開加速運転でギリギリというほどの加速なのだ。つまり停止と巡航重視から、高加速重視に試験課題が変わったといえる。

JC08モードの運転パターン(国土交通省資料より)
WLTPの試験サイクル。WLTPに基づく測定法であるWLTCが現在の基準だ(国土交通省資料より)
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