ジョブ型雇用の落し穴──“日本の法”と相性が悪い!“真実”を見抜く人事戦略(1)(1/2 ページ)

» 2021年04月05日 07時00分 公開
ジョブ型の落し穴とは?

 「ジョブ型雇用」は、コロナ禍を経て人事業界で急激に広がりをみせたキーワードです。過去にも「成果主義」というキーワードが流行し、多くの大企業が導入していました。

 このような流行そのものを否定する気はありません。しかし、言葉が持つ思想や土台との論理的整合性を無視して、「言葉が一人歩きする」という歴史が繰り返されているのも事実です。

 今回は、筆者が自社の経営で試行錯誤したことも含め、ジョブ型に飛びつく企業が見落としがちな落とし穴について説明します。

熊谷豪(シングラー株式会社 代表取締役CEO/Founder)

1983年生まれ。明治大学卒業後、ベンチャーのモバイル広告代理店に入社し、人事採用業務に従事。2011年に人事採用の上流戦略を提案するHRディレクションカンパニーを立ち上げ、コンサルティングファーム、ITベンチャー、教育、食品会社などの採用チーム立ち上げ・再建を中心とした採用コンサルティング全般に携る。

2016年11月シングラー株式会社を設立し、面接CX(候補者体験)を高めて内定辞退を防ぐ「HRアナリスト」を発表。同サービスでエントリーした日本最大級のスタートアップカンファレンス「B Dash Camp 2017 Summer in Sapporo」で準優勝に輝く。「HRアナリスト」をコアとしたHR Techによる人材採用の変革を推進中。

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「部署がなくなっても解雇できない」──解雇規制の問題

 筆者はシングラーを創業してから、われわれのビジネスモデルや思想にマッチした雇用形態、評価制度などを設計するために、ジョブ型を検討しました。導入シミュレーションをして感じた、ジョブ型導入の足かせが「解雇規制」です。

 人事業務に就かれている方にとっては釈迦に説法かもしれませんが、日本の解雇規制というのは非常にシビアに設計されています。従業員の能力が不足しているからといって、原則解雇することはできません。また、ビジネスモデルの転換などで、ある部署を解体しようとした場合、その部署に所属している人たちを解雇することは当然不可能です。

 例えば、ジョブ型雇用でインフラエンジニアを雇用する場合、対象業務のジョブディスクリプションを設定し採用します。しかしその後、インフラ開発を外部企業に外注することになり、インフラチームが社内に必要なくなったとします。

 海外などでは、このチームごと解雇することになりますが、日本の場合は解雇ができないため部署異動が発生します。インフラエンジニアからフロントエンドエンジニアへ配置転換、といったようにです。従業員としても、雇用契約と実際の契約に食い違いが発生します。ジョブで契約が行われていない時点で、おおよそジョブ型雇用は破綻しています。

 解雇ができずに配置転換した場合、ここで次の問題が起きます。

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