外国人にも人気の「缶コーヒー」が、なぜ2017年から低迷しているのかスピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2021年05月25日 10時05分 公開
[窪田順生ITmedia]

 外国人が日本にやって来て、その高い品質に驚くモノの一つに「缶コーヒー」がある。ネットやSNSには、日本の缶コーヒーを味わった外国人からこんな称賛の声があふれているのだ。

 「なにこれ? 期待しないで飲んだんだけど、めちゃくちゃうまい」「自分の国にある缶コーヒーとまったく違う、レベルが高すぎる」

 なぜこんなにも日本の缶コーヒーがうまいのかというと、品質に徹底的にこだわる日本人の「職人気質」が関係しているかもしれないが、実は「1億人という巨大な国内市場の中で切磋琢磨した」ことも大きい。

 日本の缶コーヒーの歴史は長く、パイオニア的な存在と言ってもいい。商品のアイデア自体は既に戦前の米国に存在しており、米コカ・コーラ社などでも開発が進められていたようだが、実際に販売されることはなかったという。それに対して、日本は戦後の高度経済成長期に入ってから、かなり積極的に商品化に取り組んでいたのだ。

缶コーヒーは外国人にも人気(写真提供:ゲッティイメージズ)

 『ザ・飲みモノ大百科』(著・串間努 /久須美雅士、扶桑社)によれば、『日本食糧新聞』で「1959年1月に外山食品が『ダイヤモンド缶入りコーヒー』の発売を予定」という記事が掲載されており、65年には、日本橋の三越本店が砂糖入りの缶コーヒー「ミラコーヒー」を発売。

 さらに、69年になると、上島珈琲本社(現UCC上島珈琲)の創業者・上島忠雄氏が、駅のミルクスタンドで飲んだ瓶入りのコーヒー牛乳から着想を得て、「UCCコーヒー ミルク入り」を発売。これは「世界初のミルク入り缶コーヒー」として注目を集め、翌年の大阪万博で一気に知名度が広まった。これをきっかけに他社も缶コーヒー市場へ続々と参入し、し烈な開発競争がスタートした。

 70年、日本の人口はベビーブームもあって1億人を突破。このような巨大国内市場の中で、缶コーヒーメーカーが群雄割拠して、半世紀にわたって「低価格・高品質」の競争を繰り広げれば、「え? たった100円でこんなにうまいの?」と外国人が驚愕(きょうがく)する缶コーヒーができ上がるのは自明の理だろう。ちなみに、この構造は、同じ時期から国内市場でし烈な開発競争がなされて、やがて海外市場で「低価格・高品質」が高く評価されていく自動車や家電もまったく同じだ。

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