リテール大革命

オープン初月で全店黒字化 24時間無人の古着店「秘密のさくらちゃん」を読み解く5つの秘密コロナ禍で4店舗を展開(1/3 ページ)

» 2021年07月12日 10時00分 公開
[熊谷紗希ITmedia]

 「いらっしゃいませ! 秘密のさくらちゃんへようこそ!」。入口の真横に設置されたスピーカーから、軽快な音楽とともに音声が流れてくる。「秘密のさくらちゃん」は埼玉県新所沢駅から徒歩5分のところにある無人の古着店だ。2020年1月に東京都の武蔵村山で1号店をオープン。現在は東京都内、埼玉県内と岩手県内に合計4店舗出店しており、来月には5店舗目を出店する。

 コロナ禍での開業にもかかわらず、オープン初月で全店黒字化を達成している。「オシャレと笑いで地球を救う」をコンセプトに掲げ、続々と店舗数を伸ばす「秘密のさくらちゃん」とはどんなお店なのか。同店を読み解く5つの「秘密」を探った。

秘密のさくらちゃん(新所沢店)と岡本紀子社長

店員はマネキン、決済はモニター越し、万引き対策はAIブッダ

 無人の古着店として東京都、埼玉、岩手県内で拡大する秘密のさくらちゃん。まず気になるのはその店名だ。何が「秘密」で、「さくらちゃん」とは誰なのだろうか。

 秘密のさくらちゃんを運営するママハイ(東京都中野区)の岡本紀子社長は、「秘密のさくらちゃんの店内には5つの秘密が隠されています。1つ目は非接触型の無人店舗であることで、2つ目は、さくらちゃんと名づけられたマネキンです」と話す。

 お店は非接触を特徴としており、24時間無人で営業している。入店時に人がいないと少し不安感を覚える。そこで活躍するのがマネキンのさくらちゃんだ。場の盛り上がりを演出する仕込みの「サクラ」が由来のマネキン店員。無人店舗のため、人がいないさびしさをカモフラージュする目的で設置したというが、意外にもさくらちゃんが着ている古着が人気で買い求める客も多いという。”売れっ子店員”のようだ。

マネキンのさくらちゃんたち

 無人店舗、さくらちゃんをはじめ、店内には5つの秘密、つまりお店の特徴が隠されている。店内に設置されたカメラ付きモニターもその1つだ。購入商品が決まったらモニターの前に立ち、スピーカーに向かって話しかける。モニターに本物の店員さんが映し出され、会計を手伝ってくれる仕組みだ。

モニター付きカメラに向かって話しかける

 商品の値段は服についている動物タグで確認する。価格は100円(キリン)、300円(インコ)、500円(パンダ)、1000円(ウサギ)、2000円(クマ)の5パターン。外国人や年配の客が多いため、分かりやすい価格と表記を意識しているという。

 「お客さんがスピーカーに向かって話しかけてきたら、応対します。商品数を確認して、動物タグを見せていただき、お支払いは発券機でチケットを購入いただくか、電子決済でお願いしています」(岡本氏)

 客がモニター越しに話しかけてきたときのみ応答すればいいため、1人が4店舗同時に対応する。24時間稼働し続ける必要はあるものの、他の店舗オーナーと持ち回りでシフトを回している。

取材中にちょうど他店舗に客が来店し、対応する岡本氏

 客が来店すると「いらっしゃいませ! 秘密のさくらちゃんへようこそ!」とアナウンスが流れるため、客の姿をカメラ越しに確認しているという。そうはいっても無人店舗だ。24時間営業となったら、商品が盗まれるリスクだって発生する。

 そこで4つ目の秘密の発動だ。店内に設置された動態認識や顔認識機能を持つカメラが入店客をトラッキングする。人の善意に訴えかけるため「AIブッダ」と名づけ、万引きが発生しないような、ゆるい空気感を作り上げている。カメラの名前1つとっても、お店のコンセプトである「オシャレと笑いで地球を救う」が顔をのぞかせる。

 店員はマネキンが代替し、防犯対策もカメラが担う。24時間営業、店舗を無人化することで人件費を大幅に削減し、出店1カ月で全店黒字化を達成している。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.