ホリエモンが教育ビジネスに取り組む真意 「あと何年かで“ゼロ高出身のスーパースター”が出てくる」既存の学校教育はオワコン

» 2021年08月21日 08時00分 公開
[霜田明寛ITmedia]

  「未来を恐れず、過去にとらわれず、今を生きろ」

 実業家のホリエモンこと堀江貴文氏が、近畿大学の卒業式のスピーチで述べた言葉だ。その堀江氏が株式会社による教育機関を設立し、新しい教育の方法論に挑んでいる。堀江氏が主宰し、SNS education(東京都港区)が運営するサポート校「ゼロ高等学院(ゼロ高)」は、座学を目的とせず、行動を目的として新たな学習形態を提供している。既存の通信制高校と連携した教育を推進し、生徒は高校卒業資格も取得することができるのが特徴だ(高卒資格は、教育提携先である鹿島山北高校に準じる)。

 堀江氏による既存の教育への疑問を起点とし、現状の教育機関の課題に商機を見いだし2018年にスタートした。ゼロ高からはすでに会社を設立した「女子高生社長」も出ている。

 そんな堀江氏の教育ビジネスの“対象範囲”が広がりを見せている。

 堀江氏を顧問に迎えたプリスクール「ZERO International Preschool」が9月に開園される。3歳から6歳を対象に生徒の募集を始めていて、堀江氏もオンラインを中心にカリキュラムに助言していくという。

 このプリスクールは、羽織愛氏が社長を務める英語教育スクールSUNNY BUNNY Language Education (東京都新宿区)と、ゼロ高等学院が提携して実施する幼児教育プロジェクトだ。今回のプリスクールを皮切りにゼロ高までの年齢の生徒までをゆくゆくはカバーしていきたいという。さらに東京での取り組みが軌道に乗れば他の地域でもフランチャイズ化していきたいと意気込む。

 そもそも堀江氏は現状の教育の何に疑問を感じ、このような教育プロジェクトにまい進しているのか――。その展望を聞いた。

堀江貴文(ほりえ・たかふみ)1972年福岡県八女市生まれ。実業家。SNS media&consultingファウンダーおよびロケット開発事業を手掛けるインターステラテクノロジズのファウンダー。現在は宇宙関連事業、作家活動のほか、人気アプリのプロデュースなどの活動を幅広く展開。2019年5月4日にはインターステラテクノロジズ社のロケット「宇宙品質にシフト MOMO3号機(MOMO3号機)」が民間では日本初となる宇宙空間到達に成功した。著書に『非常識に生きる』(小学館集英社プロダクション)、『将来の夢なんか、いま叶えろ。 -堀江式・実践型教育革命-』、『やりきる力』(学研プラス)など(撮影:山崎裕一)

ゼロ高を立ち上げた理由

 僕は現在の学校教育の仕組みに関して「ダメだな。オワコンだな」って思っています。正直もし僕が子どもだったら「ヤバいな」って思うと思います。

 “よく分からないけれどマスクをしている人”と、“教育に違和感があるけど何となく受け入れている人”は一緒だと思うんです。何かしらの違和感を抱えながらも、“みんながやっているから”という理由でやってしまう。“よく分からないけどやっている”時間って、ものすごく意味がない時間ですよね。人生の無駄づかいだと思います。

 この1年半、新型コロナウイルスで真面目に自粛している人は、僕からすると人生を棒に振っているように見える。なぜ怒らないのか疑問に思うくらいです。

 僕は「現在の日本の教育がよくない」と感じている人は相当数いると思っています。例えば、漢字のトメ・ハネができてないと小学校ではバツをくらうみたいなのですが、それって必要ですかね?

 みんなが、スマホやパソコンで文字を打っている時代にトメ・ハネの知識って必要でしょうか。書道家の方には必要かもしれませんが、もし書道家になりたくなったら、そのときに覚えればいい。そろばんくらい旧時代的なものですよね。

 もっと言えば、分からないことのほとんどはグーグルで検索すれば出てくる時代に、暗記型の教育が行われていること自体が時代遅れなんです。

 例えば魚のさばき方って、YouTubeを見れば今は出てきますよね。どう作ればいいんだろう、と思ったときにその作り方にすぐたどり着けるのは革命ですよね。

手前が筆者

可能性に挑戦できる時間を与えたい

 小学校・中学校の義務教育期間だけで9年間です。そこに高校の3年間をあわせると12年間も無駄なことに時間を費やしているのは、さすがにやめたほうがいいんじゃないかと思います。

 正直、僕自身は暗記することはあまり苦ではありませんでした。だから学んだことを“組み合わせる”ことに頭を使うことができました。でも、多くの人は暗記することだけで精いっぱいで、“その次”が考えられない。暗記偏重の教育を受け続けた弊害として自分の頭で物を考えたり、仕組みを思い付いたりということができなくなっている。

 だからこそ、既存の枠組みをこなすことで精いっぱいな人たちにも、可能性に挑戦できる時間を与えたいですよね。そんな思いで、僕はゼロ高等学院を立ち上げました。現在130人ほどの生徒がいます。

 特に文系の人の多くは、高校まで卒業した段階でも、自分の頭を使ってクリエイトすることをほとんどしてきていないと思うんです。中学受験の算数はちょっとクリエイティブなところはあるんですけどね。方程式を使えないからつるかめ算を使ったり。

 英語教育も暗記偏重型じゃないかと問われれば、既存の学校教育ではそうでしょう。ただ、この羽織愛さんのスクールは実際に通った子どもたちが英語を喋れるようになっています。

 AI翻訳が普及しているとはいえ、英語はしゃべれたほうがいい。子ども同士が英語でおしゃべりする教育スタイルですから、暗記偏重から開放できる場所という意味でもゼロ高と通じるものがあります。

英語教育スクールSUNNY BUNNY Language Educationの社長、羽織愛氏(左)と、ゼロ高が提携して実施する幼児教育プロジェクト「ZERO International Preschool」が9月に開園

 インターナショナルスクールという選択肢もありますが、インターナショナルスクールって実は公的には“不登校扱い”なんです。インターナショナルスクールは認可をされていない学校なので、そこにいくら通っていても、不登校児扱いを受けてしまっていて、正規の公立の学校から「卒業式くらい来ませんか?」という連絡がきたりする。さらには補助金がでないから、学費も高くなってしまいます。

 子どもの長所は没頭することができる、ということ。没頭できる時代の子どもたちにこういった教育の場所を与えること、そして忙しい親御さんにとっては、子どもを預ける場所にもなることは、どちらの面から見ても必要なことだと思っています。

ZERO International Preschoolのスケジュール例とレッスン料などの詳細
羽織愛氏が代表を務める「英語自在」

ゼロ高出身のスーパースターが出てくる

 ゼロ高生は、一般の高校生に比べて、いわゆる教科の勉強を15%程度の時間しかしていません。それで高卒資格を取れるんですね。そうすると残りの85%の自由な時間を、いろいろな挑戦に使うことができる。失敗したっていいんです。未成年というのは、親に教育の義務がありますから、衣食住に困ることはありません。親からベーシック・インカムが支給されているようなものですよね。失敗してもそこは保証されている。

 だからこそ、成功の確率を上げるためにはチャレンジの回数を増やすこと。これからの時代はいかに試行回数を増やすかが大事なんです。僕だって、多くのことが、やってみなければ、うまくいくか分かりません。

 ただ今は、ネット上では大抵の人とはつながることができるし、ほとんどの情報は手に入れることができる。特に、若いというだけで、いろいろな大人が会ってくれますしね。だから、このことに気付ける若い人はすごくラッキーだと思います。

 新しい場はみんな敬遠するので、インチキくさいと感じる人もいるかもしれません。まだ1年半しかゼロ高は経(た)っていません。でも、子どもの成長は早いですから。近い将来、ゼロ高出身のスーパースターが出てくると思いますよ。

著者プロフィール

霜田明寛(しもだ あきひろ)

1985年東京都生まれ。東京学芸大学附属高等学校を経て、2009年早稲田大学商学部卒業。文化系WEBマガジン『チェリー』編集長。『マスコミ就活革命〜普通の僕らの負けない就活術〜』(早稲田経営出版)など、3作の就活・キャリア関連の著書がある。ジャニーズタレントの仕事術とジャニー喜多川の人材育成術をまとめた4作目の著書『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)は5刷を突破のロングセラーに。。J-WAVE『STEP ONE』・SBSラジオ『IPPO』などメディア出演も多く、日々の仕事や映画評、恋愛から学んだことなどを発信するネットラジオVoicy『霜田明寛 シモダフルデイズ』は累計再生回数200万回・再生時間15万時間を突破するなど話題に。Twitter


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